日記  2006年03月15日(水) に思った 経済 のこと

新・狼少年

新・狼少年

「オオカミが近づいたら村に知らせてくれ」

見張り番をたのまれた少年は、高台に登って周囲を警戒した。
オオカミは足が迅い。見かけたらすぐに知らせなければならない。
と、言っているそばからオオカミの影が見えた。
少年は大きな声で叫んだ。

「オオカミが来たぞーーッ!」

しかし村人たちは信じなかった。
みんな落ち着き払って、ふだんの仕事をやめようとしない。
少年はさらに大きな声で叫んだ。

「本当の本当に、
 オオカミが来たぞーーッ!」

すると、村人たちが出てきて少年を諭した。
「小さなことで、いちいち騒いじゃいけないよ」
──で、で、でもオオカミが……。
「なぜそう決めつける? シカかもしれないじゃないか」
──そこかしこにオオカミの足あとが残ってます。
「そういう目で見れば、なんでもそう見えるさ」
──ヒツジの数も減ってます。食べられてます!
「放牧から帰ってないだけかもしれない」

さらに村人たちは言った。
「オオカミがいると騒がれちゃ、落ち着いて暮らせない。
 今さら村を引っ越すわけにはいかないんだから、
 そこんとこ、よく考えてくれよ。」
──どういう意味だろう?

夜が明けると、村人の数が減っていた。夜のうちに食べられたらしい。
それでも村人は信じなかった。
実際に襲われるまで、オオカミのことは考えたくないようだ。

気になった少年は、高台に登って周囲を見わたした。

オオカミの群れが村をぐるりと囲んでいた。すごい大群だ。
もうだれも逃げられない。
オオカミは好きなときに村に入ってきて、好きなだけ村人を食べていく。
この村は、オオカミたちの牧場になったのだ。

高台から下りてきた少年は、村人たちに言った。

「うん、オオカミはいなかったよ」

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