日記  2010年06月18日(金) に思った 科技 のこと

ソースの向こう側

ソースの向こう側

ふと思い出したことを書いておく。

1996年、私はマルチメディアスクールで講師をしていた。そのかたわら、私はインターネットの可能性に魅せられていた。当時はダイアルアップが主流で、サイトの数も少なかったが、Netscape Navigator 3が発表され、テレホーダイのユーザーがちらほら出てきて、爆発的な普及が始まる前夜だった。
私はいろんなサイトを見てまわり、気に入ったサイトはソースを取得して、構造を解析した。このときの勉強が、いまの私を支えている。

そんな中、とある雑誌社のサイトが目をひいた。JavaScriptの動きが凝っていたからだ。フレーム分割でできることを、あえてJavaScriptでやるとは。今じゃ珍しくない技術だが、当時はそこまで作り込む人は少なかった。
参考にしようとソースを開いて、驚いた。なんとJavaScriptの中に恨み言が刻み込まれていたのだ。

// こんな複雑になるはずじゃなかった。
// あとから要望が追加されて、ぐちゃぐちゃ。
// このあいだと話がちがいますよ。
// お姉様がぼくを監視している。

長い文章じゃなくて、ソースの合間合間にちょろちょろコメントアウトされている。いっぺんに書いたのではなく、作業しながら──「お姉様」の指示が変わるたびに──文句を残したのだろう。おおむね正論だが、面と向かって言えなかったようだ。いま、こんなコメントを残したまま公開したら大問題だが、当時はまぁ、おおらかな時代だった。
署名はない。誰が書いたか知らないが、おもしろい人がいるもんだと思った。

1999年、私はWebデザイナーになっていた。ある仕事で、プログラマのN氏と出会う。知り合ってだいぶ経ってから、ふと思い出したソースの中の恨み言の話をしたら、

「あ、それ、おれだ」とN氏が頭をかいた。
「だって、ひどかったんだよ。あのときはね……」

N氏は、ソースの向こう側で起こっていた残酷物語をとうとうと語り出したが、私はあっけにとられていた。ぽかーんってやつだ。まさか目の前にいる人物が、あのコメントを残した人物だったとは。まるでボトルメールの差出人を見つけたような気分だ。
って、ちょっと待てよ。今回納品されたプログラムに、私への恨み言は入ってないだろうな??

そして2010年、あれから11年が経過したが、N氏との付き合いはつづいている。人の縁とは不思議なものだ。

さて、なんでこんなことを思い出したか?

ふ、わかるだろ。ボトルメールを出したい気分なんだよ。

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