日記  2011年12月08日(木) に思った 娯楽 のこと

[アニメ] いばらの王 King of Thorn / 興奮から困惑へ

[アニメ] いばらの王 King of Thorn / 興奮から困惑へ

「いばらの王」について考察。

2010年のアニメ映画「いばらの王 King of Thorn」は惜しい作品だった。前半はおもしろいのに、後半はわけがわからない。ツジツマがあわない演出が多い。
その後、原作漫画を読んだんだけど……さらに荒唐無稽だった。もっと削って、もっと整理した方がいいと思うけど、これ以上やったら原作の枠組みが失われる。やむなくブレーキを踏んだことが、失速の原因だろうな。

どこにどう引っかかったのか、メモを残しておきたい。
なお、ネタバレを含むので未見の方はご遠慮いただきたい。

ストーリーまとめ(ネタバレ)

8年前、宇宙から精神寄生体「メドゥーサ」が飛来する。感染すると石化して死ぬ奇病だが、適合するとイマジネーションを具現化する能力を持つ。そのことに気づいたヴェガは、新世界の創造者になろうとする。
しかし第1の適合者、アリスによる実験には限界があった。新たな適合者を見つけるため、ヴェガはコールドスリープセンターを開設する。表向きの理由は「治療法が見つかるまでの冷凍睡眠の提供」だが、本当の理由は「感染者をシステムに接続することで、適合者を見つけ、制御する」ことだった。
ところがコールドスリープ前に、リストにない感染者(シズク)がS級資格者と判明する。すぐさま実験を開始するが、米軍の介入によって電源が落ち、制御不能になる。シズクは無秩序にオルタナティブを生成し、城をいばらで覆ってしまう。すべてはカスミの死から目を背けるためだった。
オルタナティブとして生成されたカスミが目覚め、7人の脱出劇がはじまる。彼らは人工知能ALICEによって選ばれ、暗示をかけられていた。
カスミは城外に脱出するが、シズクが救うために城に戻ってしまう。城の中枢にあったのは、カスミの遺体だった。カスミは自分自身がオルタナティブであること、シズクが自分の意志で閉じこもっていたことを知り、絶望する。そんなカスミを救ってくれたのは、シズクのいばらとマルコのやさしだった。
生き残ったカスミは、ティムと連れ添い、人のいる街に歩いていった。

なにが脅威だったのか?

SFと思わせて、じつはファンタジーだった。ここが本作最大の難点だ。原作は思いっきりファンタジーだけど、映画はなまじSF色を出しちゃったため、物語の地金と整合がつかなくなってしまった。
石化病(メドゥーサ)はなんとか受け入れられるが、イマジネーションを具現化する能力(オルタナティブ)は物理法則を超えすぎ。どこにあれほどの質量があって、どうやって活動しているのか? 劇中でも述べられているように、デタラメすぎる。
新たな生物を作るのではなく、物理法則を書き換える現象とすれば納得できる。オルタナティブの怪物がいかに強力でも、米軍の戦力なら殲滅できよう。しかし物理法則が変わっていくなら、既存世界は崩壊するしかない。
「いばら姫が問題なのではなく、いばら姫が見ている夢が問題なんだ」
「あんがい、おれたちも誰かの見た夢なのかもしれないな」
その可能性は暗示されているが、あいまいな表現ばかり。

パーティ編成の目的

人工知能(ALICE)はカスミを守るためにパーティを編成した。その目的はなんだろう? ALICEの最優先事項は「S級資格者に対するあらゆる不安定要素の排除」だから、カスミをうろつかせるメリットはない。カスミを外に出したかったのだろうか? にしても非協力的だ。
ALICEは混乱の元凶だ。誰の、いつの時点の指示で作動しているんだろう? 患者の視界と感覚をジャックできるのもやりすぎ。まぁ、赤いドレスのローラは美しかったけど。

モンスターの正体

モンスターの性質はティムの記憶(ゲーム)に基づいていることから、誰かが意図的に生成したように見える。しかしALICEにもシズクにもモンスターを徘徊させるメリットはない。しかし偶発的な産物なら、ティムの両親がいないのは不自然だ。
ティムは第3の適合者だったのかもしれない。しかしアリスやシズクほど安定せず、モンスターを生み出したところで発狂。その後のティムは、カスミ、ヴェガと同じオルタナティブと考えれば理解しやすいが、そんな演出はまったくない。
オルタナティブはメドゥーサに感染せず、半永久的な存在と言及されるが、モンスターたちは石になって朽ちる。メドゥーサによって死ぬことはないが、生命活動を停止すると石化するようだが、ややこしい。

ヴェガの真意

ヴェガはなぜ自殺しようとしたのだろう? 米軍の介入によって計画が破綻したのはショックだろうが、シズクの能力は想像以上であり、成り行きを悲観する理由にならない。
ヴェガは実験中にメドゥーサが発症してるから、現在の彼はオルタナティブと推察される。おそらくアリスが生み出したのだろう。過酷な実験を科したのに復活させてくれたアリスに恩義を感じるのはわかる。であればこそ、みずから生命を絶つ理由がわからない。
「覚えておいてくれたまえ。私たちこそすべてのはじまり。そう、神の声を聞いた人間だ!」
ヴェガの宣言は、パーティ全員がオルタナティブである可能性を示唆しているが、ロン、ターナーが石化したからちがうだろう。いや、オルタナティブも石化するから、見分けがつかないか。ややこしい。

ラストもどうなのさ

結局、メドゥーサの治療法は確立されず、オルタナティブの新世界もはじまらなかった。ティムもほどなく石化するだろうし、親権のない両親と再開できてもあまり幸福になれそうにない。カスミは地球唯一の存在となった。バイオテロの現場から生還した新種の生物を、人間が受け入れてくれるだろうか?
より突飛ではあるが、新たな王国を作ろうとする漫画のラストの方が納得できる。

文句を言うだけでなく、どうしたらスッキリするか考えてみよう。
メドゥーサの症状、オルタナティブの脅威、ALICEの役割、ヴェガの真意、結末......。これ以上手を加えると、原作の枠組みが失われてしまうな。ううーん。本作そのものが『CUBE』や『BIOHAZARD』をモチーフにしてるから、これ以上の換骨奪胎は無理だ。

コールドスリープから目覚めると、城はいばらに覆われ、奇怪なモンスターが徘徊していた。ここから生きて脱出できるか? 世界は滅亡してしまったのか?
このキーイメージを維持しながら、要素を整理する。なるほど、映画はうまく整理されていたんだなぁと、あらためて感心した。

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