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[日記2013年05月30日(木)に思った哲学のこと

[TED] エリザベス・ギルバート "創造性をはぐくむには" / 引退を考える素人に贈りたいアイデア

[TED] エリザベス・ギルバート "創造性をはぐくむには" / 引退を考える素人に贈りたいアイデア

 ニコニコ動画で大人気を博したうp主が、ほどなく引退する傾向があることに気づいた。

 もともと素人の動画作成や生放送だから、引退もクソもないんだけど、投稿をやめてしまったり、動画を消したり、コミュニティを閉鎖したり、自分にアクセスできる経路を狭めるなど、特異な行動をはじめるのだ。

  • 自分の器を超える注目を浴びてしまい、居づらくなった
  • たまたま作れた傑作と同じか、それ以上のものを求められて、困った
  • 「○○の人」といわれることがつらくなった

 といった発言を見かける。せっかく作品が評価されたのに、なぜ壊すのか? 馬鹿げてる。馬鹿げてるけど、気持ちはわかる。物事がうまくいきすぎると、人は不安になる。堪えられる不幸の量に限界があるように、堪えられる幸福の量にも限界があって、それを超えると精神のバランスを崩す。そして、不安の元凶を破壊するのも、ごく当たり前の反応なのだ。

 芸能人のすごいところは、自分の器を超える注目を浴びても動じないことだろう。事務所がうまく支えているのか、もとから特殊なメンタルでないと生き残れない世界なのか。まぁ、ニコニコ動画の魅力は、(メンタルの弱い)素人ががんばるところにあるから、プロっぽい人の活躍をあまり見たくないけどね。

創造性は自分の内側にない、と考える

 TEDで、興味深いプレゼンを見つけた。勝手ながら要約する。19分の動画で字幕もつくから、興味ある人は原典を視聴してほしい。

 エリザベス・ギルバートは、『食べて、祈って、恋をして』(Eat Pray Love)を書いた小説家。自分の回想録が世界的なヒットになったことで、彼女は周囲に「もう2度とあんなヒット作は書けないと思うと不安でしょ?」と心配され、影響され、憂鬱になった。しかし考え方を切り替えることで前向きになれた。

 それは自分の成功を、自分の手柄と考えないことだった。

 古代ギリシャやローマでは、傑作を生み出す創造性は人間の内側ではなく外側にあると考えていた。創造性を刺激する精霊のことで、古代ギリシャ人は「ダイモン」と、ローマ人は「ジーニアス」と呼んだ。つまり古代のアーティストは、成功しても「自分の力だけではない」と自惚れず、逆に失敗しても「精霊(ジーニアス)がいなくなったせい」と割り切ったわけだ。
 しかしルネッサンスによって、人間こそが世界の中心となった。創造性は個人の内から現れるものと考えられ、アーティストそのものがジーニアスとなった。こうなると、作品の評価は個人の評価に直結するため、アーティストは身の丈以上の喜びと悲しみを背負うことになった。

 エリザベス・ギルバートは、創造性と個人を切り離す考え方を提案する。素晴らしい傑作は、ジーニアスの気まぐれによって起こるもの。そう考えれば、前向きに生きていける。結果を気にせずやれることをやろう。

成功に酔わず、失敗にくじけない超人へ

 エリザベス・ギルバートのプレゼンを見ると、いろいろ納得できた。人生には、(自分の力だけではない異常な)成功もあれば、(自分の力ではどうしようもない不可避の)失敗もある。結果すべてを個人で背負うのはつらい。ダイモン、ジーニアス、神の思し召し。そうした介在を受け入れるほうが、幸福になれるようにな気がする。

 とはいえ、人生の醍醐味は、そういう割り切れない部分だったりもするけどね。

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