日記  2013年12月30日(月) に思った 哲学 のこと

なぜ老人たちはもどってきたか? / トワイライトゾーン「真夜中の遊戯」(KICK THE CAN)

なぜ老人たちはもどってきたか? / トワイライトゾーン「真夜中の遊戯」(KICK THE CAN)

 最近、「真夜中の遊戯」(KICK THE CAN)の意味がわかったような気がする。

 1983年に公開された映画『トワイライトゾーン/超次元の体験』の第2話のことだ。見てない人はたぶん見る機会もないだろうから、オチも含めて書いてしまおう。こんな話だった。

ストーリー(結末まで)

 老人ホーム「太陽の谷」(Sunnyvale Rest Home)に住む老人たちは、未来への希望や生きる歓びを失くし、ただ死を待つだけの日々を過ごしていた。
 ある日、ブルームという老人が新たに入居する。ブルームは底抜けに明るく、元気のない老人たちを集め、真夜中に缶けり遊びをしようと持ちかける。老人たちは身体が動かないとか、つまらないとか、規則違反だと反対するが、興味をそそられ参加することに。

 缶蹴りをはじめると、魔法がかかった。
 老人たちは少年少女に若返った。身体が軽く、肌がみずみずしい。子どもたちは真夜中の缶蹴りを思う存分楽しんだ。しかし我に返ると、これからのことが気になった。また子どもから人生をやり直したいか? 若いころは楽しいことも多かったが、つらいことも多かった。また働いたり、競争したり、愛する人と別れるのはいやだ。

 彼らは老人にもどることにした。
 しかし1人だけ老人にもどることを拒否し、夜の世界に飛び出していった。

 「太陽の谷」に住む老人たちは、以前より少し明るくなった。
 そしてブルームは、次の老人ホームを訪れた。

なぜ人生をやり直さないのか?

 当時、私は12歳。老人たちが若返りを望まないのは奇妙に思えた。どう考えても、人生をやりなおす方がオトクだろう。たとえ事故で死ぬとしても、もともと死人のような生活だったのだから、失うものはない。納得できない。

 老人のうち1人だけ子どものまま出て行ったことが鮮烈だった。全員が老人にもどることを選べば、老人だから臆病なのかと思ってしまうが、しそうではない。人生に再挑戦したいと思う人もいるだろう。それはまちがいではない。ブルームも止めなかった。

枯れてわかる喜び

 あれから30年が経った。
 年をとるともろもろ不自由になるが、欲望に振り回されることは減った。たとえば性欲が減れば、女の子にいいところを見せようと無理したり、空回りすることはない。好かれても、嫌われても、平穏でいられる。衰えたことで気持ちが楽になったといえる。

 ある研究によると、幸福のピークが訪れるのは85歳らしい。身体的には若い方が有利だが、若いと欲望にふりまわされ、足りないことに悩む。年をとると、ないものはないとあきらめ、あるがままを受け入れられるのだろう。

 私ならどうするか? もし子どもに戻ったら、もう一度人生をやり直したい。苦労があっても、期待感の方が大きい。今はそう思っているが、やがてそう思わなくなるかもしれない。

 自分が85歳まで生きられるかわからない。生きられたとしても、幸福感がピークに達する保証もない。ただ、「老い」は、失うことだけでないと気づきはじめている。
 というわけで、トワイライト・ゾーンの結末に納得できるようになった。30年もかかってしまった。

おまけ:試さなかった人について

 話を「真夜中の遊戯」にもどそう。
 老人たちが缶けり遊びをすることになっても、偏屈なコンロイ氏はひとりベッドに潜り込んでしまった。そして真夜中、子どもたちが遊ぶ声で目覚め、驚く。
 コンロイ氏は、窓から出ていこうとする少年が、自分の友人であると気づき、連れて行ってくれとたのむ。しかし少年は首を振って、去ってしまった。ピーター・パンのように。

 コンロイ氏は、おそらく人生に納得できていなかったのだろう。しかし偏屈だったため、子どもになれるチャンスを逃してしまった。
 ほかの老人たちは缶けりを経験することで、人生の喜びを再確認できた。コンロイ氏も参加すれば、考えが変わったかもしれない。しかしチャンスは失われた。彼は死ぬまで、参加しなかったことを悔やむだろう。
 そう思うと、あらためて怖い話だと思った。

スピルバーグとマシスンに乾杯

 この日記を書くにあたって調べてみたら、本作はトワイライト・ゾーン第3シーズン21話「Kick The Can」のリメイクだった。YouTubeに動画がアップされていたので、鑑賞する。

 結末がぜんぜんちがう。老人たちは全員、子どものまま去っちゃった。つまり「老い」の全否定だ。うひゃー。

 このエピソードが放映されたのが1962年だから、スピルバーグは当時16歳か。37歳になってトワイライト・ゾーンを映画化するとき、自分の監督作品に本作を選んだのは奇妙だ。ほかにもっと魅力的なエピソードがあるだろうに、なぜ本作を選び、このように変えたのか。スピルバーグも引っかかっていたのだろうか。
 リメイクの脚本はリチャード・マシスンだった。あぁ、なるほど。

 マニアックすぎてわかる人はいないかもしれないが、自分のメモとして残しておく。

コメント (Facebook)

思考回廊 日記
なぜ老人たちはもどってきたか? / トワイライトゾーン「真夜中の遊戯」(KICK THE CAN)