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[日記2014年03月28日(金)に思った娯楽のこと

無償の報酬

無償の報酬

 この数年で、玄人はだしのクリエイターが爆発的に増えた。

 ニコニコ動画やPixivといった発表の場が整備され、創作活動に必要なノウハウ、ツール、素材が手軽に入手できるようになったためだろう。
 卓越した技術やセンスをもちながら、俸給をもらっていない人々は、「ハイ・アマチュア」とか「野生のプロ」などと呼ばれ、数千から数万人の支持されている。その影響力は中堅クラスの芸人やタレントに比肩するだろう。

 しかしハイ・アマチュアは、唐突に創作活動をやめたり、更新速度が極端に落ちることがある。まぁ、プロじゃない=お金をもらってない=仕事じゃないから、やるもやめるも自由だけど、視聴者としては驚かされる。

ハイ・アマチュアを萎えさせるもの

 先日、とあるクリエイターが、コミュ限生放送で愚痴をこぼしていた。彼が提供したフリー素材は好評を博し、子作品が二千あまりも作られた。彼自身にも多数のフォロワーがつき、フリー素材以外の作品の閲覧回数も急増した。
 しかし人気が出ると、わけのわからないことを言うヤツが*必ず*出てくる。的外れな中傷は無視できるが、賞賛にみせかけた要望──これを作れ、あれも作れという注文──に、うんざりするそうだ。

 ただで絵を発表してるからといって、ただで注文を受けるわけじゃない。

 当たり前のことだが、わからない人が多いそうだ。まぁ、わかる人は注文しないから、届くメールは不快なものばかり。「個々の注文は受け付けません」「かんべんして」と書いても効果なし。

言葉が通じないファンと、どう付き合うか

 そこで、「1点あたり5,000円でやりますよ」と告知してみた。作業時間を考えると5,000円じゃ割にあわないが、お金をとることで相手の気持ちを確かめられると思ったからだ。

 ところがそれでも馬鹿な注文はなくならなかった。

 「5,000円は高い」とか「宣伝するから無料にしてくれ」といったメールが殺到し、いちいち対応するにも時間をとられる。すべてをシャットアウトすると、自分の絵を本当に必要としている(喜んでくれる)人も締め出してしまう。それに、絵を描いてあげることはイヤじゃない。

 なんだかなー、と彼は嘆いていた。

クリエイター奨励プログラムがもたらすもの

 ニコニコ動画は、投稿作品に奨励金を支払う「クリエイター奨励プログラム」を実施している。何百万も稼いだというクリエイターもいるらしいが、ハイ・アマチュアの層の分厚いため、すみずみまで行き届いているわけじゃない。

 前述の「彼」の場合、たくさんの子作品が作られたから相応の「子ども手当」がもらえるはずだが、500円ぽっちだったとか。クリエイター奨励プログラムの条件は非公開なので、なぜ500円なのかはわからない。閲覧数が足りなかったのか、二次創作だから減額されたのか。わからないから、改善しようもない。

「お金がほしくて投稿したわけじゃないが、わずかな奨励金が出たことで、逆に、自分の作品に価値などないと言われたようで、萎えてしまった」

「奨励金をもらうため努力するのは、仕事と同じ。だったら本業に精を出す方が効率的だ。本業はもちろん絵を描くことじゃない」

「本業の憂さ晴らしとして絵を描いているのだから、好きなことをやらしてほしい」

 好きなことをやって、思っていた以上に賞賛されて、とても楽しかったはずなのに、近ごろは悩まされてばかりだとか。放送を聞いて、クリエイターも大変だなぁと思った。

貴重な才能をつぶさぬため

 まぁ、好きなことで稼げないのは当たり前。どうしてもと言うなら、ハイ・アマチュアじゃなくプロになるべきだ。プロになれば、わずらわしいことは事務所や出版社が対応してくれるだろう。

 プロにならず、ハイ・アマチュアで文句を言うのは筋違いといえば、そうかもしれない。

 しかし視聴者としては、ノイズで創作活動が停滞するのは困る。ハイ・アマチュアに生活を賭ける覚悟がなかったとしても、作品の価値はプロと変わらない。いや、気軽に楽しめる分、私にとってはプロより価値がある。創作活動の裾野が広がるから、文化的な意義もあるだろう。たぶん。

 貴重な才能をつぶしてほしくない。しかし助成金のようなもので保護するのはちがうだろう。お金が動けば、不正を働く輩が*必ず*出てくるからだ。不正はいっそう、クリエイターを萎えさせる。

 結局、視聴者が育てるしかない。褒めるべきを褒め、やじるところをやじる。寄席の噺家を客が育てるのと同じだ。視聴者のモラルが問われる。

 文化を育てるのは文化ということか。

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