日記  2014年07月18日(金) に思った 娯楽 のこと

結婚観を封じられたディズニープリンセス

結婚観を封じられたディズニープリンセス

 ディズニープリンセスを振り返ってみる。

 「ディズニープリンセス」は文字通りディズニー映画に登場するお姫様キャラクターを集めたブランド名。公式サイトによれば、現在13人いる。ムーランは王女じゃないがカウントされ、ジゼル姫(魔法にかけられて)は肖像権の問題でカウントされていない。ポカホンタスも厳密にはプリンセスではないが、そのへんはさておく。

 ネタバレを含むので、未見の方は読まないように。

1 ●王女 ★結婚 白雪姫 白雪姫 (1937) 生粋のプリンセス
2 ◯庶民 ★結婚 シンデレラ シンデレラ (1950) 最強のプリンセス
3 ●王女 ★結婚 オーロラ姫 眠れる森の美女(1959) 基本のプリンセス
4 ●王女 ★結婚 アリエル リトル・マーメイド(1989) 逆転のプリンセス
5 ◯庶民 ★結婚 ベル 美女と野獣(1991) 悩まないプリンセス
6 ●王女 ☆結婚予定 ジャスミン アラジン(1992) 相棒としてのプリンセス
7 ●王女 -恋人あり ポカホンタス ポカホンタス(1995) 歪曲のプリンセス
8 ◯庶民 ☆結婚予定 ファ・ムーラン ムーラン(1998) 武勲のプリンセス
9 ◯庶民 ★結婚 ティアナ プリンセスと魔法のキス(2009) 努力のプリンセス
10 ●王女 ☆結婚予定 ラプンツェル 塔の上のラプンツェル(2010) 隠し切れないプリンセス
11 ●王女 -恋人なし メリダ メリダとおそろしの森(2012) 幼稚なプリンセス
12 ●王女 -友だち アナ アナと雪の女王(2013) 軽率なプリンセス
13 ●王女 -恋人なし エルサ アナと雪の女王(2013) 無責任なプリンセス

◆は私の好感度。

◆◆◆白雪姫 ... 生粋のプリンセス

 天衣無縫の、図太い女性。継母に疎まれるも自覚なし。城を放逐されても、ちゃっかり小人たちに世話してもらう。殺されても復活。愛されて当然、君臨して当然。これぞプリンセス。ロトスコープのなめらか動きも相まって、独特の雰囲気を醸し出している。

◆◆◆シンデレラ ... 最強のプリンセス

 怖くなるほど芯の強い女性。どんなに虐げられても心が折れず、明るさを失わず、敵に対しても慈悲を示す。都合の悪いことはジャックとガスが引き受けてくれるから、葛藤もない。大胆にアレンジした『シンデレラIII 戻された時計の針』(2007)は必見。

◆◆オーロラ姫 ... 基本のプリンセス

 プリンセスらしいプリンセス。原作では脈絡なく結ばれる王子を、眠りに落ちる前に、素性を隠して引きあわせたのは見事。キスしてくれた王子と結婚するのではなく、好きな人(じつは王子)にキスしてもらったわけだ。彼女自身の個性は乏しいが、スタンダードなキャラクターがいてこそ風変わりなキャラが引き立つ。

◆◆◆アリエル ... 逆転のプリンセス

 原作の結末をひっくり返したのは驚き。続編『リトル・マーメイドII Return to The Sea』(2006)では子どもも産んじゃった。アンデルセンも墓から飛び出すほどの改変だが、これはこれでいい。また好奇心旺盛なのに一途で、赤毛に貝殻のビキニなど、キャラクターの魅力もずば抜けている。
 しかし「女性が郷里を捨てて王子に嫁ぐ」というラストは、女性団体からはげしく抗議されたそうだ。このあたりからディズニープリンセスの迷走がはじまる。『スプラッシュ』(1984)がなければ、逆パターンもアリだったのだが。

◆◆ベル ... 悩まないプリンセス

 美女(ベル)は最初から野獣の本質を見抜いており、野獣の方が戸惑う構図に驚く。ベルは現代的で、活動的で、進歩的だが、それでも女性団体に批判された。いわく、「教育を受け独立した女性」だったベルが、物語の中で「人生における目標は、良い夫を見つけることである」とするただの女性になってしまったことが性差別に当たるとか。もうね、望まぬ結婚も、望んだ結婚も認められない世の中ですよ。
 私としては、真理の探究者だったベルが、野獣という風変わりな相手を好きになるギャップがおもしろかった。

◆◆ジャスミン ... 相棒としてのプリンセス

 ジャスミンは「王女らしくない自分」を認めてくれたことで、アラジンに好意を抱く。アラジンはジャスミンと結婚したくて、王子を偽る。この錯綜がおもしろいのだが、ジーニーとジャッファーのドタバタに隠れてしまった。
 掟を変えちゃうラストは強引すぎる。アラジンはそのへんの王子より価値があると証明されただろうか? どうして結婚に向き合ってくれないのか。

◆ポカホンタス ... 歪曲のプリンセス

 ストーリーは普遍的な魅力がある。愛する人と結ばれないラストもいい。しかし実在のポカホンタスの運命を思うと、この描き方はよくない。
 史実を忘れるとしても、キャラクターとしての魅力はいまひとつ。なにか魔力がほしかった。また『ポカホンタスII/イングランドへの旅立ち』(1998)で恋人を乗り換えたのも減点だ。

◆ムーラン ... 武勲のプリンセス

 戦争で武勲を立てることがテーマで、結婚はおろか恋愛さえ主要素じゃなかった。これはこれでよかったが、『ムーラン2』(2005)は恋愛ばかり強調され、勅命がおろそかになって呆れた。ムーランをプリンセスに分類するのは抵抗がある。

◆◆ティアナ ... 努力のプリンセス

 初の黒人プリンセス。王子にも結婚にも興味がない女性が、資金のためキスするという展開にしびれた。「魔法のキス」をめぐるドタバタのかたわらで、「なんでも独りで抱え込まず、人を信頼し、助けあいなさい」というメッセージもよかった。しかし劇中での言及はまったくなし。(男と)助けあう精神は、女性団体に批判されるのだろうか? なんか圧力がかかっていそうな脚本だった。

◆◆◆ラプンツェル ... 隠し切れないプリンセス

 初のポリゴンプリンセス。髪の毛だけでなく、肌や衣服の質感もばっちり。ディズニープリンセス新時代の幕開けを感じさせる。貴種流離譚であり、どうやって身分を証明するか、どんなパワーを発揮するかと思っていたが、天性の気品や魅力は隠しようもなかった。フリンの覚悟もいい。すぐ結婚せず、冷却期間を置くのもかっこいい。

◆メリダ ... 幼稚なプリンセス

 ピクサー初の女性主人公。親が決めた結婚に反発するのは、もはや定番。しかし好きな相手もおらず、王族としての義務も果たさず、さりとて国を捨てるわけじゃないのは大人げない。本作で成長したのはお母さんであり、メリダはおまけだった。

◆アナ ... 軽率なプリンセス

 初のダブルヒロイン。アナは実質的な主人公だが、なにも知らず、葛藤もないため、ぱっとしなかった。
 一目ぼれの否定は、歴代プリンセスすべてを否定する挑戦だったが、ではなにをもって伴侶を選べばいいか示されなかったのは片手落ち。クリストフを選んだのも吊り橋効果でしかない。エルサの将来に不安があるため、しっかりした伴侶がほしかった。

◆エルサ ... 無責任なプリンセス

 20歳で、最年長のプリンセス。だれにも秘密を打ち明けず、戴冠してから国を捨て、その後の惨状も知らず、「ありのままで」はないだろう。まるく収まったように見えるが、このまま国を統治してもらうのは不安だ。
 2人もプリンセスがいるのに、「恋愛」や「結婚」より「姉妹愛の確認」がテーマだったのは驚き。なんのためダブルヒロインにしたのか。

 時代が下るにつれ、「結婚」はテーマから外れていく。恋人とチューして終わりはいいが、結婚してハッピーエンドは許されないのか。いろんな答えがあっていいのに、唯一無二の正解を求めるから、おかしなことになる。
 むしろ同性愛や近親愛、異種愛が氾濫する中で、ディズニープリンセスはステレオタイプなハッピーエンドを示してほしいけどね。

 生きてるあいだに、あと何人のプリンセスを見られるだろうなぁ。

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