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[レビュー1952年01月01日に発表された 

赤い花 (美女と野獣)

The Scarlet Flower / Alenkiy tsvetochek

ロシア風の翻案がおもしろい

あらすじ

ステパン・エメーリヤヌィチは尊敬される舵手。あるとき遠方に赴くことになったステパンが3人の娘たちに土産物の希望を訊ねると、長女ゴルディーヤは黄金の冠を、次女リュバーヴァは水晶の鏡を、ナースチェンカは夢に見た赤い花を求めた。末娘の願いを姉たちは笑う。

ステパンの船旅は成功し、黄金の冠と水晶の鏡を手に入れるが、赤い花は見つからない。あるときステパンは嵐で海に投げ出され、見知らぬ島に流れ着く。島には立派な御殿があって、ステパンは姿を見せぬ主人からもてなしを受ける。気をよくしたステパンが御殿の奥にあった赤い花を摘むと、雷とともに島の主人である怪物が姿をあらわした。
「なんてことをしたのだ! よくも摘んでくれたな。私の愛する秘密の花を。私の人生でただひとつの慰めを。おまえの死をもって罪を償ってもらおう!」
ステパンはおじけず、末娘ナースチェンカのために花を摘んだと言うと、怪物は娘を差し出せば無事に返してやろうともちかける。ステパンは拒否するが、魔法の指輪をわたされ、解放された。指輪を夜明けに小指にはめると、島にもどれる。娘たちが拒否したなら、ステパンがもどれと命じられた。

ステパンは仲間の船に拾われ、家に帰った。3人の娘にはなにも語らず、知人にあとを頼んで島にもどるつもりだった。しかし立ち聞きしたナースチェンカは、自分がねだった赤い花で父親を死なせるわけにはいかないと、みずから指輪をはめて島に跳躍した。

島についたナースチェンカは赤い花を返し、罰を求めるが、怪物は彼女をもてなす。また指輪を右の小指にはめれば帰れると教えてくれた。ナースチェンカは贅沢を好まなかったが、怪物の心尽くしに感謝した。楽しい日々がすぎる。

しばらくして家のことが気になったナースチェンカに、怪物は一時的な帰宅をすすめる。怪物はナースチェンカをとても大切にしており、ナースチェンカも怪物を友だちと思っていた。家に帰るとステパンは娘の無事を喜び、姉たちは怪物からの贈り物を喜んだ。ナースチェンカは日没(8時)までに帰ると言うが、嫉妬した姉たちの妨害で約束の時刻を過ぎてしまった。

あわてて島にもどったナースチェンカは、嵐の中で死にかけている怪物を見つける。怪物への愛に気づいたナースチェンカが涙を落とすと、赤い花が光り輝いて、怪物は人間の王子となった。王子は、悪い魔女の呪いで怪物に変えられたが、怪物の姿のまま愛されたことで呪いが解けたのだ。王子は人間として愛してほしいと言うと、ナースチェンカは静かにうなずく。
2人は船で故郷へ帰るのだった。

ソビエトで制作された「美女と野獣」を下敷きとするアニメ映画。父親が破産しないこと、指輪の力で往来すること、赤い花がキーアイテムになるなど、ヴィルヌーヴ版ともボーモン版とも異なている。(どこにでもある)バラを、(異国の島だけにある)赤い花としたことで神秘性がぐっと増した。このイメージが39年後に制作されるディズニー版「美女と野獣」(1991)に継承されたのかもしれない。

お父さんが特徴的だった。仲間たちに信頼され、どんな状況でも冷静で、怪物の怒りにもひるまず、情けを求めず、黙って自分を差し出そうとする姿がかっこいい。
ナースチェンカはステレオタイプの美女だが、人間になった王子に照れて逃げ出すところはかわいかった。
そして野獣が怪物になっていたのは驚き。怪物は客人をもてなすが、自分自身は御殿で生活してないようだ。服を着て食事をする野獣より恐ろしく、みじめな印象だ。また魔法の指輪でいつでも帰れることをナースチェンカに教えたり、ナースチェンカを困らせぬよう姉たちへの土産物を用意したり、飛び抜けたやさしさを示す。原典の枠組みを崩さず、それでいて大胆な脚色に感心する。

映像も魅力的だった。なめらかな動きと、極彩色の情景は、現代アニメに慣れた目には奇妙に映るが、けっこうクセになる。
なんだか妙に気に入ってしまった。おもしろかった。


【ゆっくり文庫】で取り上げてみた。お父さんの視点でつづってみた。ぜひご覧ください。

【ゆっくり文庫】フランスの民話「美女と野獣」

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