東京原発 TOKYO: LEVEL ONE

2004年 日本映画 4ツ星 ドラマ 社会派

「近づかなきゃ、読めないじゃないか!」

2002年はコメディだが、福島原発事故が起こった今見るとあまりにブラック。安易な原発反対ばかりで、エネルギー問題を議論していないという指摘は痛烈だった。たしかに私たちは考えていない。原発のリスクを許容するか、新たなエネルギーを開発するか、生活水準を落とすか? 傍観は、一部の「偉い人」が決めたことへの賛成になるのだ。

こっそりプルトニウム燃料を運ばせる役人の受け答えが印象的。
「なに言ってるんですかぁ。国のやることに責任者なんかいるはずないでしょう」
絶対安全といいながら、責任をとる人間も組織もいない。福島原発事故が、それを証明してしまった。無責任な絶対安全。ここに、原発問題の根源があると思う。

映画として見ると、知事の真意がわかりにくい。議員たちの憶測が正鵠を射ていたとしても、知事は驚くか、照れるべきだろう。また核ジャックの混乱も局所的。出動許可が出ない自衛隊や、渋滞に巻き込まれる爆弾処理班の当惑なんかも描いてほしかった。

それから「死の灰」やプルトニウム燃料容器の言及に誇張があったのは残念。正確でないことは仕方ない。だって「日本の原子力に関する情報公開は、ロシアにも劣る」のだから。ことさら脅威を煽るのではなく、信頼できないところが怖いと言う方がリアルだったと思う。

しかし、おもしろかった。テンポもよく、エンディングも切れ味があった。細かいところで批判するのは意味がない。多くの人に見てもらいたい映画の1つである。

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