ジェイコブス・ラダー Jacob's Ladder

1990年 外国映画 3ツ星 戦争 狂気 病院

それは「救い」なのか?

あらすじ

ジェイコブ・シンガーはベトナム戦争の帰還兵。今はニューヨークの郵便局で働き、恋人とおだやかな日々を過ごしている。しかし悪魔的な幻覚や、過去の記憶がフラッシュバックするようになり、ジェイコブは現実感を喪失していく。
ベトナムの戦友たちも同じ症状に悩まされていた。悪魔の仕業と恐れるポールは、話した直後に殺されてしまった。ジェイコブは、軍が自分たちになにかしたと考える。しかし調査を開始すると戦友たちは離れていき、ジェイコブの経歴も消されてしまう。
孤立したジェイコブに、軍の化学者だった男が接触する。彼の告白によれば、軍はジェイコブの部隊を、「ラダー」という幻覚剤の実験台にしたようだ。しかしそれを証明することも、失ったものを取り返すこともできない。ジェイコブの精神は疲れ果て、死別した息子ゲイブのあとを追う。
ジェイコブはベトナム戦争の野戦病院で息を引き取った。(おわり)

こわい映画である。こうなったらヤだなぁ、と思う不安が容赦なく映像化されている。なにが現実で、なにが記憶で、なにが幻覚なのか? ストーリーの方向性も見えないから、観客も落ち着かない。ラストで一応の説明はつくが、すんなり納得できる人は少ないだろう。いや、納得したくないのだ。

反戦映画のように見えるが、もっと普遍的なテーマがあると思う。従軍せずとも、ラダーを投与されずとも、死を前にして魂が迷うことはだれにでも起こりうるからだ。
ジェイコブは「救い」を見つけたのか、ほかの道を閉ざされ追い込まれたのか? 聖書の知識があれば、サインに気づけるのかもしれない。
おもしろかったとは言えないが、印象的な映画だった。

ページ先頭へ