戦え!!イクサー1 (OVA全3巻) Fight! Iczer One

1985年 アニメ 2ツ星 SF:スペースオペラ クトゥルフ神話 モンスター ロボット

美少女とスプラッタとSFと特撮と巨大メカ

あらすじ ACT I

加納渚は平凡な女子高生。ある朝、コスプレした金髪美少女(イクサー1)を見かけ驚く。翌朝、渚の両親が怪物になって襲ってきた。駆けつけたイクサー1に救われるが、両親は死亡。イクサー1は、地球を侵略するクトゥルフと戦うため、力を貸してほしいと言うが、渚は理解できない。両親が死んだのはイクサー1のせいだとなじる。
そのときクトゥルフの先兵であるコバルトが巨大ロボ・ディロスθを駆って都心部に降下、無差別に攻撃をはじめた。やむなくイクサー1は渚をイクサーロボに転送。2人の心が1つになったとき、イクサーロボはディロスθを打ち倒すのだった。

あらすじ ACT II

クトゥルフの侵略がはじまったが、渚は戦いを拒絶。イクサー1は単身でクトゥルフの母艦に赴くが、異次元空間に囚われてしまう。
渚は被災した母子(小夜子&小夜子の母)を匿い、自分が戦わないことで被害が拡大している現実を思い知る。深夜、クトゥルフの怪物に襲われ母親が死亡。渚は戦いを決意し、イクサーロボを召喚する。
そのころイクサー1は、妹を自称するイクサー2の猛攻にさらされていた。イクサーロボの出現を見たイクサー2は、イクサー1に合体しろと促す。イクサー1と渚はイクサーロボに、イクサー2とセピアはイクサーΣに搭乗。対決がはじまった。

あらすじ ACT III

イクサーΣの強大なパワーに、イクサーロボは歯が立たない。見かねて飛び出してきた小夜子を、イクサー2が踏み潰す。すると渚の感情が昂り、イクサーロボがパワーアップ。一方、セピアは動揺してイクサーΣはパワーダウン。イクサーΣは破壊され、セピアは死亡、イクサー2は脱出した。
小夜子はバリアーで守られ、無事だった。渚はイクサー1とクトゥルフの母艦に乗り込むことを決意する。そこに回復したイクサー2が現れ、渚を連れ去ってしまう。イクサー2は敗因をパートナーの差にあると考え、渚に執着していた。
イクサー1は渚を救うべく、イクサーロボで突入。イクサーロボは破壊され、自身も消耗する。そこに洗脳された渚が現れた。操り人形となった渚は、自分を殺してほしいと懇願。イクサー1は渚を殺す。すると渚の魂がイクサー1と重なる。
「これが! シンクロ!」
イクサー2は嫉妬し、攻撃するが、敗北。イクサー1はビッグゴールドを打ち倒し、合体。クトゥルフの民を導くものとなった。
イクサー1は時間を巻き戻し、侵略される前の平和な地球にもどした。朝、渚は金髪美少女と出会うが、だれかわからない。イクサー1は悲しく微笑むと、去っていった。

発売当時、私は14歳。このOVAのせいで私は『レモンピープル』の魔境に足を踏み入れた。阿乱霊の連載漫画も読んだけど、まったく別作品だった。

本作は『幻夢戦記レダ』につづくSF美少女アニメの金字塔だった。目を引くのは特撮テイスト。都合のいい瞬間移動や、決めポーズ、そして渡辺宙明のサウンドが大きい。イクサー2は、まんまハカイダーだもんね。巨大ロボットが登場するが、リアリティの追求を放棄したスーパーロボットである。皮膚がやぶれて怪物になるスプラッター表現も、当時のはやりだった。美少女とグロは相性がいい。免疫がないひとは驚くだろうが、あのころの美少女雑誌は極端なグロが多かった。
そして美少女である。オープニングからコバルトとセピアの濡れ場。ストーリーにはまったく関係しないが、たまらなかった。敬語で叫ぶイクサー1、「お姉さま」と絡むイクサー2、そのサラサラヘアー。コックピットの全裸もすてき。てんこ盛りだ。
しかしACT II以降は、ぷりぷり幼女と不必要に美しい母さんに萎えた。平野監督は美少女専門で、美幼女、美熟女は不得手らしい。男は全年齢ダメだった。ACT Iの富士壱號パイロットは落書きだったが、ACT II以降はシリアスに描いている。しかしだからといって世界観になじむわけでもない。いっそ、両陣営とも美少女で固めるべきだった。というのは21世紀の文脈か。

イクサー1が渚を選んだ理由、シンクロの効果、ビッグゴールドの由来など、わからない点は多いが、当時はまったく気にならんかった。そんなことよりイクサーΣのマントがよかったんじゃ。

2017年、ふたたび鑑賞する。ほんと、ストーリーは薄っぺらいが、意外と楽しめる。美少女がおびえ、怒り、戦う決意をする展開は、やっぱり熱い。しかしイクサー1の戦い方がナックルだったり、ビームだったり、剣だったりと安定しない。なにかしらアイテムを用意すれば、オモチャ展開もあったかも。シンクロして胸のパネルが光るのも唐突かな。このあたりは練り込んでほしかったが、ま、今さらか。

とにかく本作は、オタクたちの心を猛烈に揺さぶった。意味不明に、熱い時代だった。

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