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[レビュー1999年06月11日に発表された 

愛人霊

Aijin-Rei

オチが弱い

ストーリー(結末まで)

小説家の上原は、妻が所有する別荘で、若くて美しいナオミと逢引きしていた。ナオミは「結婚したい」「子どもを産みたい」とねだるが、資産家の妻と別れる決心はつかない。そこへ妻が訪ねてきて、関係の清算を要求。怒ったナオミは妻を刺そうとして転倒、自分を刺して死んでしまった。

スキャンダルを恐れた妻は死体を埋め、ナオミが来た痕跡を消していく。共犯関係になったことで夫婦仲も回復する。すべてうまく収まったように思えた。しかし妻はナオミの影におびえ、ヒステリックになっていく。うんざりした上原は、ナオミとの思い出にひたる。

その夜、ナオミの霊があらわれ、恐怖した妻は階段を転げ落ちて死んだ。ナオミは、上原の女装だった。上原はナオミと妻の死体を埋め、「これでふたりっきりだ」と喜ぶ。しかしナオミは「いいえ、独りっきりよ」と返す。ナオミはやっぱり死んでいた。
上原は「愛人霊」という小説を上梓する。

犯罪の隠蔽工作はおもしろかった。心霊現象で破綻するところもよい。ナオミの死体を掘り起こし、念入りに破壊したのは驚き。だが、オチが弱い。愛人霊が上原の妄想なら、洗濯しても落ちない染み、無意識に描いた絵、風呂場で絡みついた黒髪はなんだったのか? 上原が仕組むにしても無理があるし、それらしい演出もなかった。

また、「愛人と妻は、どちらが小説家の才能を引き出せるか?」というテーマがあってもよかった。妻は、自分の保護が小説家の才能を伸ばすことになると思って結婚したようだから、ナオミを一概に否定できないはず。ふたりの女性の人生を狂わせたのだから、小説家の才能は罪作りだ。

太宰治のように、周囲の女性を破滅させる魔性があったらおもしろかったと思う。

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