南極物語 Antarctica

1983年 日本映画 4ツ星 実話に基づく

みんなが結末を知ってる映画

じつに寡黙な映画。情感を表すセリフが極端に少ないため、登場人物の心情は、演技(表情やそぶり)から察するしかない。高倉健なんて、映画全体でもわずかしかしゃべってない。それでも彼らの苦悩や感激が伝わってくるのだから、すごい。
もっとドラマティックに演出すればいいのに……と思ったが、本作は結末が知られちゃってる映画だ。悲劇性をあおったところで、あまり効果はないかもしれない。

映画を見た後、南極観測隊について調べてみた。宗谷のこと、昭和基地のこと、樺太犬のこと……。知れば知るほど、おもしろい。本作はドキュメンタリーっぽく見えるが、あんがい情報量は少ない。もうちょっと情報を増やしてもいいのに……と思ったが、そうすると思考が散って、感動を損ねたかもしれない。

たとえば、こんな視点もある。樺太犬は南極でも生存可能だった。もしメスがいたら、野犬の数が増えていたかもしれない。するとペンギンやアザラシは大打撃を受け、生態系が狂ってしまう。1年後に生存した犬を回収できたのは不幸中の幸いだったわけだ。劇中、犬たちを毒殺しようとしたのは正しい判断で、生死を自然にゆだねるのはまちがいなのだが、まぁ、こんなことを述べたら感動は減っちゃうね。

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