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[レビュー1992年03月07日に発表された 

ドラえもん(13) のび太と雲の王国

Doraemon: Nobita and the Kingdom of Clouds

藤子先生のSFセンスが炸裂している!

雲を固めて自分だけの王国を作る出だしは素晴らしい。もう1つの雲の国と摩擦を起こす展開もいい。環境問題を織り込むのも定番だ。
しかし本作はどうしちゃったのか、演出がぶっ飛んでいる。「地球を大切に」と訴えつつ、「武力による抑止の危険性」をまざまざと見せつけている。

資金が足りず、株式王国とするのび太。王国が完成して、大株主になったスネ夫は威張るが、ジャイアンの暴力にねじ伏せられる。それをのび太がひみつ道具(雲の国王冠)で支配する。おいおい、それでいいのか?
天上世界もけっこう怖い。パルパルはかわいいけど、のび太たちを冷静に監視している。なるほど広報担当が女性だと、イメージが向上する。裁判で味方してくれるまで、超やっかいな敵だと思っていた。
天上世界が地上の絶滅種を収集しているのも奇妙だ。戦いを嫌うと言うが、動物たちの本能をねじ曲げて飼育するのはいかがなものか。天上世界は地上にコンプレックスがあるのかも。

地上を洗い流すノア計画に対抗し、ドラえもんは最終兵器(雲もどしガス)をちらつかせる。「武力による抑止」と言うわけだ。しかし王冠を密猟団に盗まれ、最終兵器が発動してしまう。もう、びっくりさ!
ドラえもんが危機感を抱いたのは、ノア計画が発動した10日後を見たから。天上世界の人々も、雲もどしガスで州が破壊されるのを見てから、攻撃をやめた。使ってはならない最終兵器は、実際に使わないと説得力をもたない。「仕方ない」と安易に最終兵器を出したドラえもんの罪は重い。特攻したくなるのも無理はない。

事件を解決したのは武力ではなく、ドンジャラ村のホイやキー坊との交流だった。だがこれで環境破壊が免罪されたわけじゃない。今の子どもたちが大人になるまで、執行猶予がついただけ。晴れた日に空を見上げて、平和な日々に感謝したくなる。

ドラえもんの映画としては異質すぎるが、メッセージ性の高さは類を見ない。すごい映画だった。


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