獄門島 / 上川隆也の金田一耕助ファイル#2 Gokumon-to | Hell's Gate Island
2003年 日本ドラマ 4ツ星 #金田一耕助手札を明かした金田一耕助
上川隆也版の2作目だが、1作目とは演出方針が大きく変わっている。最大のちがいは、金田一のモノローグが入ったこと。金田一耕助は徹底的に手札を明かさない探偵だから、いま、だれを、どんな理由で疑っているかわかるのは新鮮だった。異論はあるだろうが、私は楽しめた。また回想シーンに光線を入れたり、死体の目にペンライトを当てる演出もおもしろい。
本編に目を向けると、殺害される姉妹を三つ子にしたことで、異常性が増している。三姉妹は「人の心を理解しない娘たち」として描かれる。無残に殺されるショックを軽減するための演出だが、昨今の感性だと、このくらいのワガママは「かわいい」と評価され、意図に反して悲劇性が増してしまうかもしれない。これも時代の移り変わりか。
時代といえば、「キちがいじゃが仕方ない」のセリフはなかった。春に設定したことで、「うぐいす」の季語と季節が合致したからだ。セリフを省くだけでなく、セリフを言う背景まで変えてしまうとは驚きだ。
それとテレビドラマだから仕方ないのかもしれないが、昭和21年とは思えないほど画面が明るい。スイッチで照明がつくし、懐中電灯もある。これじゃ提灯のトリックが冴えない。むかしはフィルム感度の問題で明るく撮るのが困難だったが、最近は暗く撮る(暗さを表現する)方が難しくなってしまった。
本作の新解釈は、先代・嘉右衛門が生きていたことだろう。びっくりしたけど、さほど物語に影響しない。要素を絞るなら、鵜飼くんと謎の復員兵を同一人物にしたほうがいいだろう。それから本作では、俳句が書かれた屏風を金田一に見せた和尚の真意がクローズアップされている。和尚は止めてもらいたかった。金田一は止められなかった。いつもの金田一耕助なんだけど、上川版だと若さゆえのあやまちに見えて、なかなか新鮮だった。
これまでの映像化作品より、金田一と早苗の恋が強調された。若く誠実な上川版なら大歓迎だが、直前に和尚を止められなかった負い目があるため、今ひとつ盛り上がらない。そして早苗を演じる高島礼子に貫禄がありすぎる。本作の早苗は罪人への同情心がうすく、外の世界へのあこがれも感じられない。これじゃ島を出てくるはずがない。悩みぬいて踏みとどまったのではなく、若い金田一をからかったようにしか見えないのは残念だ。これはキャスティングの失敗だろう。
いくつか気になる点はあるけど、また新しい『獄門島』を見られたのはよかった。同じ原作でも、映像化するたびストーリーが変わるのはおもしろい。
翌年から稲垣吾郎版がはじまってしまったせいか、2作で途切れてしまったのは残念だ。
金田一耕助 | |
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石坂浩二 | |
渥美清 |
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古谷一行 |
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鹿賀丈史 |
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豊川悦司 |
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上川隆也 | |
稲垣吾郎 |
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