タイムトラベラー きのうから来た恋人 Blast from the Past

1999年 外国映画 3ツ星 タイムトラベル 恋愛

美女と古代人

あらすじ

1962年、発明家カルヴィンは核戦争がはじまったと勘違いして、妻といっしょに核シェルターに避難する。シェルターの中で息子アダムが生まれ、両親と50年代ドラマに教育されて、立派な紳士に成長する。
35年後の1997年、物資調達のためアダムは外界に出た。現代アメリカは人種も思想も入り混じっており、純朴なアダムはすぐ騙されてしまう。事態を見かねた店員イブが助けたことで、ふたりは知り合う。現代っ子のイブにとって、アダムの考え方やマナーは奇妙であり、また新鮮だった。ふたりは恋に落ちていく。

設定は特殊だが、内容はよくあるラブロマンス。類似の作品として、「ニューヨークの恋人」(2001)がある。
見どころはアダムと現代人とのギャップ。アダムは35年もシェルターで暮らしていたが、教養があって、誠実で、紳士だった。現代の過激なテレビ、矛盾に満ちたニュースに悩まされなかったため、より「人間らしい」と言えるかもしれない。核シェルターは放射能ではなく、思想汚染を防いだようだ。現代人イブが、アダムと交際することで「古き好き時代のカップル」になっていくのは微笑まく見えた。
35年も自給自足できるシェルターがあるのか? 広い空間を知らずに育っても健全なのか? 50年代のアメリカ人はそんなに良心的か? といった疑問もあるが、そのへんはあえて目を瞑ろう。金持ちになってしまうラストも含め、これは『美女と野獣』のような童話だと思う。

クリストファー・ウォーケン演じるお父さんがすてき。「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」(2002)もそうだけど、時代遅れの人を演じさせるとすごく味がある。

はじめて見た時は、お父さんが共産党を毛嫌いするのが奇妙に見えた。いわゆる「赤狩り」は、現代ではイケナイコトと認識されている。35年のギャップがもたらすマイナス要素として描かれたのだろう。
しかし40代になって見返すと、むしろ「赤狩り」の全否定はおかしいと思いはじめた。共産党は純粋な被害者じゃないし、終わった問題でもない。「赤狩り」には多くの弊害があったが、放置すればどうなっていたかを想像すると、簡単に答えが出せない問題だった。少なくとも、共産党への嫌悪=古い考え方、という図式は軽率だろう。

まぁ、共産党うんうんは本作のテーマじゃないが、人間の思想や善性は時代によって変わるのだなぁと、しみじみ思うのだった。

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