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[レビュー1994年03月26日に発表された 

屋根裏の散歩者 (実相寺監督版) The Watcher in the Attic

ちぐはぐな演出

あらすじ

 1920年代半ば、東京市のとある遊民宿。くだらない住人たちの、くだらない会話に飽き飽きする青年・郷田三郎(三上博史)。同じ宿に素人探偵・明智小五郎(嶋田久作)が住んでいる。
 ある日、押し入れから屋根裏に登れることを知った郷田は、住人たちの生活をのぞき見するようになる。郷田は興味本位で住人のひとりを殺害。完全犯罪を為したと興奮するが、明智小五郎の心理試験によって暴かれてしまう。

 傾いた構図、不自然な光源、自己主張の激しい効果音、ソフトフォーカス。いつもの実相寺演出が冴えるが、屋根裏から見える世界が魅力的なら、郷田が殺人を犯す理由もない。郷田は、屋根裏の散歩にも飽きてしまうことを省略しないでほしい。
 まぁ、実相寺演出があっても屋根裏の散歩は単調。エロシーンが多くともドラマはないし、実生活とのギャップも楽しめない。飽きる。これって、監督が狙った効果だろうか?

 郷田は理由もなく殺人を犯してしまうが、その心理は描かれない。原作通りヤレとは言わないが、犯罪者の心理を、ふつうの人にもわかるように描いたところが魅力なのに。
 技巧ばかり凝らして、方向性を見誤っている。死体が見つかったあとの行動もわからない。明智小五郎に暴露されて、それでどうなったのか?

 短編を長編映画にするのだから、住人たちの裏と表に戸惑うとか、屋根裏から見た事実を言えなくて窮地に陥るとか、そうした展開がほしかった。

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