カンパニー・マン Cypher

2002年 外国映画 4ツ星 管理社会 記憶操作

欲張りすぎたか

なるほど『CUBE』に好対照をなす物語だった。人物の描写や場面切り替えが印象的で、ぐいぐい引き込まれる。講義の「真実」がわかったときは、座っているのがつらくなるほど緊張したよ。

興味深いのは、企業が奪い合っているものの正体があいまいなこと。それっぽい手順を踏み、それっぽい場所に隠してあるが、誰も正体を知らない。この世の多くは、そうした意味のない飾りでできているのかもしれない。巨大なCUBEが作られた意図を、作った人全員が知らなかったことに通じるものがある。

で、主人公にとって大切なものは「愛」だったわけで、見てて赤面しちゃうほどベッタベタの話だったわけだけど、そう感じさせない演出は見事だった。
物語全体を俯瞰したときに、いささか無理があるのは事実。『CUBE』に比べ、欲張りすぎちゃったかな。それでもなお、ビンチェンゾ・ナタリ監督の次回作に期待させる出来ではあった。

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