スターシップ・トゥルーパーズ Starship Troopers

1997年 外国映画 3ツ星 SF:スペースオペラ コメディ 主人公は軍人 学校 戦争

戦争を賛美することで批判する

上映時、私は26歳。かっこいいパワードスーツでエイリアンをやっつける痛快アクション大作と思って見てみたら、ぜんぜんちがった。兵士たちは勇猛果敢なんだけど、どうにもマヌケだ。仲間たちは次々に死んでいき、生き残った主人公は英雄として祭り上げられていく。戦争そのものに疑念があるが、だれも指摘しない。これは本当に地球を守る戦いだったのか? 腑に落ちないものを感じていたが、ラストにプロパガンダ広報が入って、これが悪趣味なパロディだったことを理解する。
タイトルだけ借りてきて、好き勝手に改変したものだったのか。ひどい原作レイプもあったもんだ。
当時はそう思っていた。

30代になって、1959年に発表された原作小説にも軍国主義を賛美する側面があったことを知る。兵役に就くことで選挙権をもった市民となる。兵役を忌避するものに、国の未来を左右する資格はない。そして兵役を経験した市民は人種差別をしない。戦うことによって得られるプラスの面を、ハイラインは真剣に主張していたのだろう。しかしベトナム戦争に敗北し、冷戦が集結した現代のセンスには合わない。合わないが、パワードスーツから派生したロボット戦争が一世を風靡したことは、皮肉なことだ。戦うことの意義を考えず、ひたすら戦うことに興奮するのは、本末転倒だからだ。

してみるとバーホーベン監督の試みはおもしろい。戦争賛美のストーリーで、戦争批判を展開しているからだ。
本作には戦争を批判するキャラクターはまったく登場しない。みんな一致団結して戦っているのに、うまくいかない。そして容赦ないグロ表現が、死の生々しさを教えてくれる。かっこいい「死」などない。あるのは人体の「破壊」のみ。戦争がリアルであればあるほど、現実感がうしなわれる。戦時中もこんな雰囲気だったのかもしれない。恐ろしい。

単純な原作レイプではない。しかし忠実な映像化でもない。ハイラインの意図したものとはちがうが、現代に必要なメッセージが込められている。見た当時はひどい映画化と思っていたが、これは素晴らしい試みだったと思う。

スターシップ・トゥルーパーズ
映画
CG映画
アニメ

ページ先頭へ