嫌われ松子の一生 MEMORIES OF MATSUKO
2006年 日本映画 5ツ星 コメディ ミュージカル「気がつけば、歌っていました♪」
このミュージカルはすごい! 絢爛たる人生に美化されているが、現実はわびしいかぎりだ。とりわけ晩年はひどく、誰かに殺されなくても、早晩、のたれ死んでいただろう。愛された数は少なく、しかし愛した数は多い。その生き様をどう見るかで、自分の価値さえ決まってしまいそうだ。
甥の視点で描いているのもいいね。死んだ伯母さんの話は、他人のようで他人でなく、妙なくすぐったさがある。松子から一歩ひくことで、本作はとても親しみやすくなったと思う。
さまざまなエピソードが、死という結末に向かってつながっていく。だんだん全体像(人生)が見えてくるのは、じつに痛快だった。すべてが明らかになったときは、当人がもう死んでいる事実を突き付けられたようで、なんとも寂しい気持ちになった。
美しくて、汚い。切なくて、楽しい。
いい映画を見たと思った。