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[レビュー2007年06月22日に発表された 

シッコ Sicko SiCKO

「おれたちは何者だ?」

保険制度の問題点を指摘するのに、無保険の危険性ではなく、保険加入者の現状を伝えるところがシュール。アメリカの保険は、財産の搾取システムだった。恐ろしい。劇中には誇張されたり、伏せられた部分もあるだろうが、アメリカの医療制度が大きな問題を抱えていることをはまちがいない。
どうしてこうなったのか? ムーア監督は資本主義の限界をほのめかしている。もはや人間は、みずからの欲望をコントロールできなくなっているのだ。

そして編集がうまい。123分と長い映画なのに、最後まで飽きさせない。テーマを明確にして、取材・検証して、新たなテーマを引き出す。これほど興奮するドキュメンタリー映画もない。

おもしろいのは、ムーア監督の姿勢。他国の医療制度を紹介し、アメリカの悪いところを容赦なく叩いておきながら、決して自虐的ではない。アメリカを変えよう。変えられるはずだとエールを送っている。政府を批判するだけの映画と一線を画している。

日本は逆に、弱者救済が制度を疲弊させている。アメリカのような切り捨てがいいとは思わないが、弱者であることを虎の威のように使う勢力は問題だ。日本の問題点を、ムーア監督のように議論の場に出してくれる監督はいないだろうか。

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