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[レビュー2009年11月29日に発表された 

坂の上の雲 第1部 (#1-5) / NHKスペシャルドラマ

SAKA NO UE NO KUMO (1-5)

やや偏向してる

まことに小さな国が、開化期を迎えようとしている。
四国は伊予松山に、三人の男がいた。

この古い城下町に生まれた秋山真之は、日露戦争が起こるにあたって、勝利は不可能に近いと言われたバルチック艦隊を滅ぼすに至る作戦を立て、それを実施した。

その兄の秋山好古は、日本の騎兵を育成し、史上最強の騎兵といわれるコサック師団を破るという奇跡を遂げた。

もう一人は、俳句、短歌といった日本の古い短詩形に新風を入れて、その中興の祖となった俳人・正岡子規である。

彼らは、明治という時代人の体質で、前をのみ見つめながら歩く。登っていく坂の上の青い天に、もし一朶の白い雲が輝いているとすれば、それのみを見つめて坂を登っていくであろう。

声:渡辺謙

小説『坂の上の雲』は親父の本棚にあったが、まだ読んでない。いつか読もうと思っていたが、先にドラマを見ることになってしまった。私は史実や大まかなストーリーを知ってるし、松山「坂の上の雲ミュージアム」で関連資料や名場面、名台詞を読んでしまったから、読むのはドラマが完結してからにしよう。そのほうが情景や人物像をイメージしやすいだろうから。

あるものを省き、ないものを加えた理由は?

...と思っていたが、おかしな雰囲気。CGを駆使した映像はリアルで興奮するが、ドラマの演出が偏っている。当時の世界情勢を顧みず、「日本人は非道なことをした」「日本人は間違った道を歩んだ」とするのはおかしい。平和主義の伊藤博文に詰め寄られて、現実主義の陸奥宗光が言い返さないのはなぜか? 井上馨も人柄が出ていない。「日清戦争はいい戦争だった」などと言うつもりはないが、開戦派には開戦派の道理があるわけで、そこを描かないのは片手落ちだ。
原作になく、かつ史実として確認されていないシーンを加えた理由はなんだろう? 「プロジェクトJAPAN」に先行して放送された「JAPANデビュー」が偏向・捏造があったとして批判、訴訟を起こされたように、どうにも司馬史観を否定したいバイアスがかかっているように思える。そういう作品を作りたいなら、フィクションと銘打って、ほかの小説の威を借りないでやってほしい。

なぜ勝てたのか? なぜ負けたのか?

旅順占領や黄海海戦はばっさりカット。丁汝昌が自殺に追い込まれた背景(清国の政情)も語られないので、山本五十六が死を悼む理由が伝わらない。清国が負けた理由がわからないと、日本が勝てた理由もわからない。1つ1つのエピソードをたんねんに描く余裕がないのはわかるが、けっこう重要なところが抜け落ちてしまった。
話は逸れるが、現代の中国は、かつての日本のように団結し、勢いがある。そして日本は、かつての清国のように過去の栄光にすがっている。過去から学ぶことは多いと思うよ。

もっと好古を!

「坂の上の雲ミュージアム」で秋山好古の企画展を見て、秋山好古のファンになった。物語の主人公は弟・真之だが、私はもっと秋山好古の活躍を見たい。長身で彫りの深い阿部寛はイメージぴったりだが、出番が少なくて悲しい。時間が足りないのはわかるけど、もったいない。

しかし、おもしろい

不満はあるが、『坂の上の雲』から目が離せないのも事実。配役もばっちりで、軍神・広瀬武夫(藤本隆宏)、ねずみ公使・小村寿太郎(竹中直人)は当たり役。最新の映像技術によって再現された明治の情景にも圧倒される。

この5話をもって第一部は終了。第2部は2010年12月5日からスタートする。1年もあいだが空くのはつらいが、待つしかないね。


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