機動警察パトレイバー ON TELEVISION (全47話) Patlabor: The TV Series
1989年 アニメ 4ツ星 SF ロボット 刑事・警察社会人の青春、その終わりが見えたころ
2016年、ニコ生上映会で一気に鑑賞する。パトレイバーは旧OVA(1988)、劇場版1(1989), 2(1993), 3(2002)をリアルタイムで見たが、テレビシリーズ(1989)は見損ねていた。
放送当時、私は18歳。あれから27年である──。世の中も、私自身もすっかり変わってしまった。パトレイバーは「1988年を基点とした10年後」という世界観だったが、2016年の常識で見ると奇妙な点も少なくない。しかしながらロボットを軸とした【社会人の青春】というドラマは普遍的な魅力があった。
テレビシリーズ鑑賞メモ
テレビシリーズで気づいたことを述べると、南雲隊長が若々しい。かわいい。キュート。後藤隊長は一歩退いてチームをまとめている。整備班の存在は大きく、「特車二課壊滅す!」は素晴らしかった。遊馬と野明の微妙な関係もリアルで、ほほえましい。特車二課のようなところで働きたくなる。
グリフォン編が半端に描かれたのは奇妙。これは放送期間が半年から一年に伸びたため、急遽、突っ込んだエピソードらしい。そのため熊耳武緒さんの存在がやや浮いている。ちゃんと1年ものとして企画すれば、もっと密度の濃いシリーズになっただろう。
巨大ロボットのリアリティ
押井守がうるさく言っているように、やはり全高8mの人型ロボットで土木作業したり、格闘するのはリアリティに欠ける。旧OVA、劇場版では気にならなかったが、さまざまなシーンでの活動が描かれたことで、どうしても目についてしまう。それから劇中で起こる犯罪のほとんどが現場作業員の喧嘩だったのも物足りない。まぁ、巨大ロボットによる戦争が当たり前だったことを考えると、きわめて大きな転換点だったけどね。
実現するなら人間サイズ(全高2m)で、多脚型、遠隔(有線)操縦になるだろう。小型イクストルのような。もちろん大量の小型ドローンによる制圧がリアルだが、犯罪者によるハッキング、ジャミング対策として、有人操縦が意味をもつかもしれない。現在の技術でもう一度シミュレーションしてほしい作品である。なお私は新OVA、実写版シリーズを見ていない。
終わりが見えた青春の途中
終盤は白眉。決戦らしい決戦もなく、ピースメーカー配備でイングラムが退役するわけでもなく、青春の途中で──それも「終わりが見えはじめた途中」で──幕を引く。こんな物語は見たことがない。
劇場版2で野明は、「レイバーが好きなだけの女の子でいたくない」と言った。つまりテレビシリーズは、「レイバーが好きなだけの女の子」だった時代といえる。野明は、この充実した日々がやがて終わることに気づき、それでもなお、だからこそ、いまを全力で生きようと決意する。イングラムの膝を損傷してでも犯人逮捕を優先する姿に、かつてない意志が感じられた。
榊班長もいいね。自分は時代遅れと野明に泣き言をこぼしながら、彼女の泣き言については「話す相手をまちがえている」と言って、去ってしまう。サングラスを外した目がやさしい。部下に厳しく接するため、サングラスをかけていたのだろうか。最後に、ピースメーカーのマニュアルを読む姿がちらっと映る。
まだ終わっちゃあいない。
青春はいつか終わるかもしれないが、そんなことを考えても仕方ない。いまやれることを全力でやろうじゃないか。
いやぁ、おもしろかった。
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