[レビュー1979年04月12日に発表された 

マッドマックス Mad Max

アクション 狂気
更新日:2020年05月24日(日) 13:27 [Edit]

噛み合わない対立

オーストラリアの低予算映画。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』に抜かれるまで、「制作費と興行収入の差が最も大きい映画」としてギネスブックに掲載されていた。
予算の大半を車の改造に使ってしまったため、衣装やロケ地はありもの。なので、10倍の予算が投じられた『2』ほどの派手さはない。そのへんの田舎で、ただのオッサンが、てきとーな暴力をふるうだけ。オッサンたちも無名の役者ばかり。それゆえ妙なリアリティがあった。

ストーリー

近未来のオーストラリア。政府の弱体化によって、暴走族が強奪や暴行などやりたい放題にしていた。対抗する特殊警察(MFP)は人員、装備、練度に劣る。報復を恐れて裁判も機能しない有様だった。

凶悪犯ナイトライダーが脱走した。名前はかっこいいが、ただのオッサンである。若き警官マックス・ロカタンスキーに追跡され、ナイトライダーはトラックに突っ込んで死亡する。

ナイトライダーの友人トーカッターはMFPへの復讐を誓う。部下のジョニー・ザ・ボーイに隊員グースを襲撃させ、生きたまま焼かせる。グースは搬送先の病院で死亡した。

「不死身のグース」と言っていた友人が惨殺されたことで、マックスは辞職を願い出る。マックスは暴走族を追うことに快楽をおぼえており、自分も暴走の狂気に囚われることを危惧していた。
マックスの技量を惜しんだ署長が引き止める。

「だれもヒーローを信じてはいないが、いま人々にはヒーローが必要だ。そして、おまえこそがそのヒーローだ!」

休暇を薦められたマックスは、妻と幼い息子を連れて旅行に出かける。マックスが目を離したすきに、トーカッターが絡んできて、息子は轢き殺され、妻は重体となる。

復讐の鬼と化したマックスは、水平二連式ソードオフ・ショットガンと、特殊追跡車「V8インターセプター」を無断で持ち出し、トーカッター一味を追いかける。
マックスは右膝を撃ち抜かれ、右腕をバイクの車輪に轢かれるが、ひたすら暴走族を追い回して全滅させた。

帰り道、マックスは追い剥ぎしているジョニーを見かける。マックスはジョニーの足首を燃料が漏れる車に手錠でくくりつけ、ライターを置き、糸鋸をわたす。ジョニーは自分の足を切ることができず、爆死する。

マックスはハイウェイを去っていった。

スピード狂の世界

見どころはカーチェイス。路面スレスレのアングル、衝突寸前に目玉を見開くカットなど、さまざまな工夫が凝らされている。スピードが高まると、運転手は笑ったり泣いたりする。「ヒャッハー」と喜ぶだけでない。

直接的なバイオレンス描写(血や内臓)は少ないが、ほのめかす演出がたくみ。またグースや奥さんが即死しなかったり、負傷して不自由になるなど、緊張感はひたすら高い。一瞬のミスで破滅する。そうわかっていてもアクセフを踏み込む。アドレナリンでおかしくなる。この状態を「MAD」と呼ぶようだ。
『フレンチ・コネクション』(1971)のカーチェイスも革新的だったが、『マッドマックス』は運転手の興奮状態が白眉だった。

認識されてないヒーロー

暴走族は漠然と「警官ぶっ殺してやる」と思っているだけで、マックスを個別認識していない。マックスの友人や妻を襲ったのも偶然だ。ナイトライダーもトーカッターも、だれもかれもマックスを知らない。
署長はマックスをヒーローともてはやすが、根拠はない。そもそもMFPが市民に感謝されるシーンがない。ただ人員欠如を恐れて引き止めたのではないか。

しかしマックスは正義を拠りどころに暴走する。やってることは暴走族と同じ。その構図がシュール。

噛み合わない対話

ジョニーは小悪党。トーカッターに命令されてグースを殺したが、躊躇があったのか、別行動していた。といっても追い剥ぎしてるから、改心したわけじゃない。そんなジョニーを、マックスは問答無用で爆殺する。ジョニーが友人の仇と知っていたわけじゃない。「暴走族ぶっ殺してやる」と思ってるだけだ。

ひたすら対話がない。まぁ、ハイウェイをぶっ飛ばす暴走族と警官に、対話があろうはずもない。噛み合わないボケとツッコミ。これも『マッドマックス』の味わいで、シリーズに継承され、『北斗の拳』に引用される。
この味わいは、たまたまそう見えるだけで、監督が意図したものではないように思う。

メル・ギブソン
映画
マッドマックス
リーサル・ウェポン

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