プリンセスと魔法のキス The Princess and the Frog

2009年 外国映画 4ツ星 @ディズニー @ディズニー長編アニメ

子どもと大人で受け止め方が異なるだろう

カエルになった王子にキスしたら元に戻ってハッピーエンド。こんな単純な童話をよくアレンジしたと思う。セックスやモラルに関することが巧妙に隠されており、子どもは子どもで楽しめるが、大人は大人でちがった意味を見出せるだろう。よくできてる。おもしろかった。

「キス」が暗示するものはなにか? ナヴィーンやシャーロットなどの上流階級はキスを軽く扱っている。貧乏人ティアナも成功のため、それに倣おうとするが、抵抗感がぬぐいきれない。また、真実のないキスに魔法の効果がないのも意味深だった。
ママ・オーディは、ティアナとナヴィーンに「望むものではなく、本当に必要なものはなにか考えて」とアドバイスする。ナヴィーンに足りないものは誠実さだった。ティアナに足りないものは、仲間をたよる気持ちだったと思う。ティアナは友人シャーロットの援助を受けて、ナヴィーンに交渉してもらう。ひとの力を借りることは、決して悪いことじゃない。それは重要な気づきだと思うが、劇中では言及されない。そのため、とんとん拍子に成功したように見えるかもしれない。あえてハッキリ言わないところがいいんだけど、そのせいで作品が軽く見られてしまうのはもったいない。

ティアナは、ディズニー史上初の黒人系プリンセスである。ただ肌の色が黒いだけじゃない。黒人の国に見初められるわけでもない。近代アメリカにおいて、人種差別をはねのけ、仲間たちと力を合わせて成功するのだ。ここにも深いメッセージが隠されているが、人種差別の表現はソフトなため、あまり際立っていない。人種差別を強調するのも夢がないから、難しいところか。

そして本作は久しぶりの手描きアニメーションである。3Dアニメでは表現できない魅力がふんだんに盛り込まれており、その点でも満足できた。

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