ミザリー Misery

1990年 外国映画 4ツ星 犯罪 @S.キング

小説が魅力でなかったら......

アニー(キャシー・ベイツ)がめちゃくちゃ怖い。自分の話で興奮して暴れたり、溲瓶をちゃぷちゃぷして威嚇するあたりは身震いした。看護婦の前では、かくも患者は弱い立場になるんだな。
そんな怪物アニーを刺激せず、辛抱強く脱出の機会をうかがうポール・シェルダン(ジェームズ・カーン)も素晴らしい。よくあるホラー映画の被害者のように絶叫をあげたり、逃げ回ることはないが、大量の汗が緊張感を高めている。

シェルダンは、アニーが喜ぶ小説を書くことでチャンスをつかんだ。もし小説がつまらなかったら、アニーの注意をそらすことはできなかった。つまりシェルダンは、アニーの嗜好をよく把握していたことになる。さすがはプロだ。小説が魅力的だから起こった災難だけど、その魅力によって脱出できたのは、なんとも皮肉な話だ。

ラストで、シェルダンにトラウマが残ったことがわかる。さらりと流されているけど、この傷は深そう。彼が小説家であるかぎり、アニー(ファン)の幻影に悩まされるんだろうな。

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