女優霊 Don't Look Up

1996年 日本映画 3ツ星 幽霊 幽霊屋敷

たしかに荒削り

のちにジャパニーズ・ホラーの火付け役となる、中田秀夫監督のホラー映画デビュー作。本作の経験を踏まえて「リング」(1998)や「呪怨」(2000)が撮影されたと思うと、うなづける部分が多い。逆に言えば、本作はコツがつかめておらず、ストーリーも恐怖演出も粗い。

いちばん怖かったのは、女社長が撮影所に乗り込んでくるところ。社長はなにかを見て、察して、恐怖する。「なんの映画を撮ってるの!」と問いただすが、答えを求めず、「いいから、持っておきなさい」と女優にお守りを渡して去っていく。女社長は、霊の正体を知っているのだ。本来なら後半で主人公が女社長を訪ね、なにを見たのか、撮影所でなにがあったのか聞くべきなんだけど、女社長の出番はこれっきり。モッタイナイ。

撮影所は、映画を産み出す子宮だ。歴史を経て、人間のさまざまな想いが染み付き、それがフィルムに焼き付くこともあるだろう。そんな恐怖を描きたかったのはわかるが、表現力が足りてなかった。おもしろいテーマなので、まただれか挑戦してほしい。ハリウッドリメイク「THE JOYUREI 女優霊」(2010)は、撮影所という基本要素を外してしまったからね。

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