レビュー  1978年06月17日  に発表された 

冬の華
Fuyu no Hana

4ツ星

高倉健の目にやられる

ストーリーは単純。あしながおじさん(ヤクザ)はジュディ(ヤクザが殺した男の娘)と結ばれるか否か? その前段階として、ヤクザは娘に過去を告げられるか? 大の男がえんえん悩むのもおかしいが、悩んでも仕方ない事情が少しずつ明らかになる。ウェブスターの小説はハッピーエンドだったが、高倉健にそれが許されるはずもない。ある意味、結末は見えている。にもかかわらず緊張感は失われない。ありきたりの暴力と、クロード・チアリのテーマ曲が繰り返されるだけなのに。

物語ではなく、雰囲気を見せる映画だった。その到達点は、ラストに高倉健が見せる眼差し。なにを言うわけでも、なにを見ているわけでもない。頭の中にいろんな思いが渦巻いていることがわかる。強烈なカット。この一瞬のために、映画が作られたとわかる。

娘が若造とキスしたことで怒った高倉健は、街でヤクザをぶちのめす。ヤクザは仲間を引き連れ、報復のため高倉健を探す。高倉健は逃げも隠れもせず、静かに酒を飲む。この状況をどうやって切り抜けるのか? 劇中でもっとも緊張したシーンだった。終わってみればあっけない、一般人にはまねできない決着だったけど、それが高倉健の逃れられぬ運命を暗示しているようで、感慨深かった。

黙ってトーストにジャムを塗る。床に置かれた電話、無造作に転がるレモン。手紙を書いては捨てるの繰り返し。「どうして会えるなんて、思ってたのかなぁ」とつぶやく。

「かっこいい」と言うべきか、「切ない」と言うべきか。言葉で表現しがたい映画だった。

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