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[レビュー1981年05月23日に発表された 

魔性の夏 四谷怪談より

Masho no natsu - 'Yotsuya kaidan' yori

ストレートな映画化

上映時間の2/3は、伊右衛門によるお岩さん虐待に費やされる。萩原健一は典型的な駄目男をリアルに演じており、それゆえ、胸焼けする。なんの落ち度もない美女がいじめられるさまを見て、楽しめる人は少ない。いや、そういう趣味があっても、そそる映像美はない。
終盤はお岩さんの復讐ターン。しかし『東海道四谷怪談』(1959)ほど激しくない。ほとんど自滅だから、たまったストレスも解消されない。

伊右衛門はただの駄目男で、ちっとも感情移入できない。「早く死ねばいい」としか思えない主人公を見つづけるのはつらい。お岩も聞き分けがよすぎて、悔しさや怒り、絶望を感じない。生前(死ぬ直前)のパワーがないから、怨霊になっても怖くない。お岩の妹・そで(夏目雅子)はやたら存在感があって、お岩も梅も霞んでしまった。バランスが悪い。

最初から最後まで、なんの発見もない。四谷怪談を知っている人ほど楽しめないだろう。それから音楽が合ってない。あれほど外れた音楽をかけるところに、監督の作家性を感じる。

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