[Edit]
[レビュー2011年09月17日に発表された 

蛍火の杜へ

Into the Forest of Fireflies' Light | Hotarubi no Mori e

恋の終わりを予感すること

あらすじ

ホタルは6歳の夏、森で迷子になって妖怪「ギン」に助けられる。ギンは、キツネのお面をかぶっていることをのぞけば、ふつうの高校生の少年に見えた。ギンを気に入ったホタルは夏ごと森に遊びに来るが、ギンは人に触れられると消えてしまうため、ふたりはつねに一定の距離を保っていた。

月日は流れ、ホタルは中学生になったが、ギンははじめて会ったときと変わらない。ギンが人間でないことを思い知らされる。やがて高校生になり、ギンと釣り合いがとれた。もうホタルは、ギンへの想いを抑えきれなくなっていた。しかしホタルは、この恋がもうすぐ終わることを予感していた。

驚くべきことに、ホタルは奇跡を信じていない。いつかギンの体質が変わるとか、自分が妖怪の仲間になるなんて、まったく期待していない。ギンに制限を課した妖怪たちを恨むこともない。ただ静かに現実を受け入れている。
なのに具体的な結末は想像できてない。ギンを消滅させないためには、別れるしかない。では、いつ、どちらから、どうやって切り出すのか? 現実を直視する冷静さと、現実から目を背ける繊細さが同居している。そこがたまらなく、せつない。

最後の夏、ギンは驚くほど直裁的に心中を明かす。喜ばしい展開のはずが、まるで別れ話の前振りに思えてしまう。ふたりの気持ちが近づけば近づくほど、恋の終わりが確定的になる。私はもう四十を超えた中年だが、ドキドキしてしまった。

あっさりした結末は、鮮烈な印象を残す。もっと劇的に描かれるべきなのに、これはないだろう! いや、こうなるしかなかった。むしろ、こうなってよかった。
瞬間に、すべての想いが結実できた。魂を抜かれるような思いだった。


Share

Next