ゾンビ処刑人 The Revenant

2009年 外国映画 5ツ星 コメディ モンスター:ゾンビ 主人公は殺し屋 戦争

笑える恐怖がいちばんヤバイ

ふざけたタイトルだから、ふざけた内容だろうと思っていたが、おもしろかった。ホラーコメディに分類されるが、いわゆる茶化したコメディではない。笑いの中に恐怖があって、恐怖の中に笑いがある。一級ホラーだと思う。

前半と後半で雰囲気が変わるから、戸惑う人も多いだろう。しかし、よくよく見てみると、問題は最初からそこにあって、目を逸らした分だけ悪化している。親友ジョーイはおもしろいヤツだが、最初からクソ野郎だった。バートも最初から優柔不断で、ずっと決断を先送りしている。彼らが「夜回りガンマン」と賞賛されたのは偶然で、決して正義のヒーローではない。こんなインチキが長続きするはずない。

とはいえ、彼らだけ責めることはできない。本当に怖いのはアメリカ社会だ。ちょっと歩いただけで犯罪に出くわすロサンゼルスの治安。無能どころか害悪でしかない警察。そして悪質な政府と軍。バートたちが社会を信用しないのも無理はない。
アメリカ人は、たとえば伝染病にかかったら自己申告するのだろうか? それとも勝手な判断で隠蔽し、事態を悪化させるだろうか? 自分のことしか考えない社会は、本当に恐ろしい。

バートはどうしてゾンビ化したのだろう? はっきりした言及はないが、陰謀の匂いがする。バートは殺害され、その遺体と身分が利用された。さらに転用され、カザフスタンに送り返される。これが陸軍の「優遇」か? だれか、事件の全容を把握しているヤツはいるのか? わからないことが怖い。

理性を残したゾンビと言えば、『ゾンビコップ』を思い出す。感染せず、12時間で崩壊する運命なら、バートたちもヒーローになれたかもしれない。逆に言えば、感染する不死者という時点で、ハッピーエンドはありえなかったのだ。

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