推理の前提がまちがっている

あらすじ

美しい成長した娘・ヴァレリーは、良心によって金持ちのヘンリーとの婚約を決められてしまう。ヴァレリーは木こりのペーターと愛し合っており、駆け落ちしようと考えるが、その夜、姉が何者かに惨殺される。
森には魔力ある狼が住んでおり、村人は生け贄を捧げることで安全を守ってきた。その協定が破られたことに憤慨した村人たちは、武器を手に山狩りをして、狼を仕留める。しかしヘンリーの父が犠牲になってしまった。
すべて解決したと浮かれる村人たち。そこに魔物ハンターとして名高いソロモン神父の一団が到着する。神父は、事件の元凶は「人狼」であり、人狼は村人の中に混じっていると宣言する。

童話『赤ずきん』を題材にしたミステリー。だれが人狼なのか? ヴァレリーはどうして人狼の言葉がわかるのか? といった謎でぐいぐい引っ張る。展開が早いのはうれしいけど、早すぎて人物相関図がわからないまま、犯人が露見してしまった。もったいない。

ミステリーとして考えると、神父の話がまちがっていたのが痛恨だ。人狼は人間を殺して成り代わると言うけど、そんな能力はなかった。神父が知らなかったのか、ウソをついていたのか。ウソをつく理由はある。自分が愛した女性が最初から人狼だったことや、2人の娘が混血であることを信じたくないからだ。
ウソをつくのはいいが、描写されないのは困る。たとえば2人の娘が狼の遠吠え(人狼の言葉)を理解したら、おもしろくなっただろう。神父は、娘が混血であると認めるかわりに、人狼を特定できるわけだ(ヴァレリーが混血なら、人狼は親になる)。

ヴァレリーも個性がない。美しいけど慢心せず、嫉妬されたと知っても驚かない。都会にあこがれず、ヘンリーの思いにも揺れない。「いい子のふりをしている」と紹介されているが、いい子でも悪い子でもなく、うつろな子だ。
ヴァレリーは人間として暮らすことに執着していないようだ。それはピーターを愛するゆえか、どうでもよくなったのか。このあたりが描かれないのは画竜点睛を欠く。

人狼の系譜をたどると、セザールの父親(ヴァレリーの祖父)が人狼だったようだ。おばあちゃんは、自分が愛した男が人間外であることを知っていたのか? おばあちゃんは、おじいちゃんを殺しているのではないか? そのへんも交えればよかったのに。

いろいろ粗いけど、おもしろかった。

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