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[レビュー2012年04月22日に発表された 

氷菓 (全22話+OVA1話)

Hyouka

恋がすべてを変える

京都アニメーションの作画レベルはすさまじい。女の子は魅力的だし、情景には心を揺さぶられる。『けいおん!』ほど異世界でないこともありがたい。なによりストーリーが卓越している。日常を題材にした推理モノを、まさかアニメで楽しめるとは思わなかった。新鮮な驚きの連続で、子どものころに戻ったような興奮があった。

保留

ハッキリ言葉にしないが、奉太郎とえるが相思相愛であることは疑いようもない。しかし最終回でも、奉太郎は決定的な言葉を飲み込んでしまった。言葉にしたら、省エネ主義者の奉太郎は恋愛を効率化することになる。それはありえない。あるいは、えるの気持ちが期待とずれている可能性を恐れているのか。だから、ハッキリさせない。つまり「保留」だ。
見ている方は、「おまえら、早く結婚しろ!」と言いたくなるが、まぁ、急かすことはない。彼らには時間があるのだから。くそっ!

屈託

屈託とは気になること、こだわってくよくよすること。登場人物はみな屈託を持っており、それが通常ではない行動を引き起こしている。漠然とわかっていた現象が、「屈託」という言葉で整理された。
興味深いのは、探偵役の奉太郎は現象のみを分析し、関係者の内面(屈託)には気が回っていない。そのため根本的な見落としを繰り返してしまう。学校の勉強と推理能力が比例しないように、推理能力と人の心を推し量る度量は比例しないようだ。第18話「連峰は晴れているか」における自発的調査は、そうした欠点を埋め合わせようとする気持ちが起こさせたのかもしれない。
推理小説の用語で言えば、奉太郎は「フーダニット」「ハウダニット」は閃くが、「ホワイダニット」はにぶい。姉の供恵はこのあたりも鋭い印象を受ける。末恐ろしい姉弟だ。

『古典部シリーズ』はありふれた日常を扱っているため、本来ならアニメ化するような作品じゃない。しかし実写作品で、このアニメを越えるのは難しいだろう。美少女のかわいらしさだけでなく、思考過程や心象風景のヴィジュアル化において、アニメの長所をフル活用している。京都アニメーションはいい仕事をしている。

近ごろ、ミステリー系の作品が増えつつある。ストレートな犯罪推理だけでなく、スパイもの、脱出ゲームものなども含まれる。しかし重要なのはトリックの規模や複雑さではなく、登場人物のドラマなのだ。本作は推理ものでありながら、みずみずしい恋心や奮い立つ克己心、人間関係の妙などを描いてくれた。ありそうでなかった切り口であり、おもしろかった。

氷菓 (1-5)

5話で終わると思っていなかったので、拍子抜けした。古典部の先輩である供恵が氷菓の創刊号を読み、それでベナレス(インド)に飛んだと予想していたので、急速スケールダウンした感じ。落ち着いて最初から見なおすと、いい話だった。ここに至り、私は古典部シリーズの方向性を理解できた。

愚者のエンドロール (8-11)

折木が人間を見ていないことが判明する。逆に古典部メンバーはきちんと人間を見ており、奇妙な逆転が起こっている。万人の死角に気づく天才に盲点があったとは。入須先輩が持ちかけた才能の話も興味深い。

クドリャフカの順番 (12-17)

動きまわる里志を、動かない折木が凌駕する。里志が考える「期待」の絶望感がせつない。このときは気づかなかったが、えるが集客に熱心なのは未来を見据えた決意の表れだった。彼女の屈託とも言える。そして事件の中心にいた田名辺の屈託の強さ、陸山の屈託のなさに目まいを起こす。残酷だ。

遠まわりする雛 (6-7,19-)

一話完結型もおもしろい。最終回の「遠まわりする雛」とは、折木とえる、ふたりを指しているんだな。いいなぁ。

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