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[レビュー1938年03月01日に発表された 

阿部一族 (熊谷久虎監督版)

The Abe Family

独特のリアリティ

 戦前のモノクロ映画。あまりに古くて、キャストもスタッフもわからない。お城や屋敷のセットは壮大で、実物に見える。役者の佇まい、しゃべりかたも、なにやら当時のサムライっぽい。タイムスリップして撮影した記録映像のようだ。

 序盤はほぼ原作どおりだが、弥一右衛門の切腹以降は翻案されており、ちと混乱する。光尚は弥一右衛門の切腹を、ほかの殉死者と同格に扱ったはずだが、知行は均等割にされ、阿部一族の反感を買う。憎しみの対象となる林外記が目立たない。また一周忌で父の位牌がないことに怒った権兵衛は髻を押し切るが、これもわかりにくい。「ない」のではなく「下段にある」とかのほうがわかりやすかろう。安倍一族は原作ほど一枚岩ではなく、弟たちの不甲斐なさ、不和が、原作のテーマを濁らせている。なぜこのように変えたのか、理解に苦しむ。

 そして籠城戦。原作通り、竹内数馬はいきなり死亡。あとは乱戦。これまた後世の時代劇ほど洗練されてない。

 安倍一族は全滅したが、多くの部下を失ったことで光尚は激怒。外記を叱り飛ばし、畑十太夫を追放する。柄本又十郎が抜け駆けしたことも構いなし。あまりに身勝手で、ほんとに救いがない。

 盛り上がりたいけど、盛り上がれない。
 しかし不思議とリアルな映画だった。

【ゆっくり文庫】で取り上げました




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