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[レビュー1950年08月04日に発表された 

サンセット大通り

Sunset Boulevard

逆転した愛

あらすじ

 サンセット大通りにある大きな邸宅のプールに、若い男の死体が浮かんでいた。彼はB級映画の脚本を2本ほど書いたジョー・ギリス。ジョーはなぜ、だれに殺されたのか? 話は半年ほど前に遡る。

 借金取りに追われたジョーは、逃げ込んだ邸宅でサイレント映画時代のスター女優、ノーマ・デズモンドと出会う。ノーマに気に入られたジョーは、ゴーストライターとして雇われ、いっしょに暮らしはじめる。
 ノーマはとうの昔に忘れ去られた存在だ。しかし執事マックスが事実を伏せ、いつでも復帰できるように思わせていた。ノーマが露骨な愛情を示すようになったため、ジョーは彼女から離れ、ベティという若い女性と共同して、傑作の脚本を書きはじめる。ところがノーマが自殺未遂を起こしたため、ふたたび邸宅にもどり、深い関係になってしまう。

 ある日、ノーマは撮影所からの電話を出演オファーと勘違いする。いさんで撮影所へ赴き、旧知のデミル監督や昔を知るファンたちに囲まれたことで気持ちが高まり、美容のためアスリートのような試練を課す。
 執事マックスは、ノーマをスターに育てた映画監督であり、最初の夫だった。マックスはノーマを壊した責任を取るため、終わらない夢を見させていた。マックスはジョーに、ベティとの関係を隠すよう警告する。
 ほどなくベティの存在を知ったノーマは、嫌がらせの電話をかける。ジョーはベティに別れを告げると、ノーマにも現実を見るよう訴える。しかしノーマは認められず、ジョーを撃ってしまった。

 翌朝、警察がプールの死体を引き上げ、カメラマンや記者が押しかけてくる。しかしノーマは正気を失っており、自分のカムバック映画の撮影がはじまったと思いこむ。マックスが「アクション!」と声をかけると、ノーマは女王の役を演じながら階段を降りていった。

(おわり)

いやはや、すごい映画だった。ノーマを演じたグロリア・スワンソンの経歴や、実際の撮影所、実際の監督たちが共演し、実際のフィルムが活用された背景などを知ると、さらに楽しめる。よくもまぁ、こんな映画を撮れたものだ。ビリー・ワイルダー監督、恐るべし。

何度も見直して、いろいろ気づいた。マックスは、自分が壊した少女ノーマを愛し、夢を上演しつづけた。ジョーは50歳のノーマを尊敬し、夢を終わらせようとした。彼女だけ苦しめつもりはなく、自分もベティと別れ、いっしょに生きる覚悟を決めたのだろう。ノーマがジョーに追いすがりさえすれば、それでフィナーレだった。
しかしノーマは拒否した。幕が降りたあとの平凡で、ただ衰えていくだけの人生を恐れた。それは仕方ないことで、ジョーの段取りが足りなかった。ジョーが一流の脚本家なら、彼女を立ち直らせる脚本を書けただろうに。

真に恐るべきは、人々を狂わせる銀幕の世界だ。ノーマやマックスだけでなく、たった2本の脚本を書いただけで故郷に帰れなくなったジョーも同じ。みんな、骨の髄まで魅了されている。その興奮を知ってしまったら、もう、ふつうの生き方なんてできないのだろう。

恐ろしいが、うらやましい。
だからほんとに、恐ろしい。

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