レビュー  2012年12月02日  に発表された 

紙ひこうき (Paperman)
Paperman

3ツ星

ここまでやるのか

『シュガー・ラッシュ』の劇場公開時に同時上映された短編アニメ。セルアニメに見えるが、3Dモデルで描画されている。メイキングも見たけど、ものすごい手間がかかってる。ここまでやらずとも表現できただろうに。表現への飽くなき欲求に驚かされる。

主人公の大きな鼻とヒロインの唇が印象的だ。表情も記号じゃなくて、からだ全体で表現されている。笑うときは「破顔」するし、キャラクターがどこを見て、どう感じているか強く伝わってくる。こうした表現は、日本のアニメではあまり見られない。

 3Dアニメの進化はめざましく、毎年驚かされているんだけど、「Paperman」はセリフや色がないため、表現力の高さが際立っている。
 3DCGに2Dのドローイングを重ねるという技術によって、CGの立体感と手描きの風合いを両立させているそうだ。ロトスコープの3D版だが、描き込まれた線はベクターデータとして処理され、3Dモデルに追従するとか。すごすぎて、理解が追いつかない。

Paperman

下流工程は下流でしかない

 手描きアニメは極端に作業量の多い映像表現で、国内で作るには人件費の折り合いがつかず、韓国や中国の下請けに投げることで成り立っている。アニメが文化として認知されていく一方で、動画だけでなく原画も投げるようになり、技術の流出や後継者不足が問題視されていた。

 しかしディズニー(ピクサー)の作品を見ていると、下流工程は下流でしかないことを思い知らされる。もちろん3Dアニメにも膨大な作業があるだろうけど、2D手描きアニメよりデザイナーのセンスが占めるウェイトが大きいだろう。

Paperman

日本のアニメは次世代へ行けるか?

 残念ながら、日本の3Dアニメはこの域に達していない。カメラがぐりぐり動いたり、派手なエフェクトは得意だけど、キャラクターの気持ちを伝える表現力はさっぱり弱い。声優の演技や、タイトルの付加価値で動員しているだけだ。

 もちろん、CGによる作業負荷の軽減は大きい。メカものは顕著だ。これはこれで素晴らしいのだが、もともと手描きで崩れていたところが整形されただけで、新たな感動をもたらしたとは言えない。
 古いアニメを見なおすと、へっぽこ作画に落胆することが多い。言い換えると、客は作画の良し悪しをあまり意識していないってことだ。迫力ある映像は、見た瞬間は強いインパクトを与えるけど、あっという間に風化しちゃう。これじゃ文化にならない。
 動かすべきは絵じゃなくて、客の心なのだ。

Paperman

上流はどこか

 話を戻そう。
 産業として考えると、問題は下流工程を投げることじゃなくて、次世代の技術習得をおろそかにすることだった。技術革新によって、仕事の流れは変わっていくからだ。

 たとえばフィギュア制作は、日本がデザインして中国で製造しているんだけど、製造技術の大半が中国に渡ってしまい、もう日本国内では作れないらしい。しかしこれも3Dプリンタによって変わるかもしれない。
 類似の例は枚挙にいとまがない。

 世の中の変化は想像するより早い。変化に対応できない人材は淘汰される。
 本当に気をつけないとね。

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