獄門島 (石坂浩二#3) Gokumon-to | Hell's Gate Island

1977年 日本映画 4ツ星 #金田一耕助

これほどリアルな映像はもう望めないかも

私が最初に見た『獄門島』の映像化。緻密に再現された昭和21年(1946)の情景がすごい。家屋は古くて、広くて、暗い。提灯で夜道を歩くシーンも、数ある映像化作品の中で、もっとも怖い。今は使われなくなった言葉や風習が見られるのも興味深い。
そういえば重大なヒントとなる「きちがいじゃが仕方ない」のセリフは、本作以降、自主規制でカットされている。現代は、1977年の表現も許容できないのか。

さておき本編。いんちき復員兵との遭遇や、床屋さんでの世間話など、状況説明がうまい。のんびりした空気と、人間社会の闇が混在となっている。三姉妹の殺害現場は夢に見るほどショッキングだった。

ほかの作品と異なり、金田一は屏風の俳句が読めず、見立て殺人であることになかなか気づかない。しかしこの事件の場合、見立て殺人に必要な「意味を解する人」がいない(故人)から、俳句が読めても推理は難しいだろう。読めなくした演出はほかに類を見ず、おもしろい。
私は3人の不審者(与三松、鵜飼、謎の復員兵)に注意が向いてしまい、怪しい和尚はノーチェックだった。鵜飼くんがただの居候だったのは拍子抜けだが、まぁ、リアルではある。

事件を解きほぐすと、元凶は先代の執念であって、馬鹿らしいといえば馬鹿らしい。しかし了然(佐分利信)の演技と存在感が、重い説得力をもたせている。肇の訃報に触れたとき、また勝野と崖に立ったときの震えは、真に迫るものがあった。

石坂浩二の金田一は、勝野にも早苗にも心が揺れなかった。ラストで金田一は宿代を精算し、貸し借りをなくしてしまう。お七(坂口良子)は、帰るところがない金田一に同情するが、それだけ。早苗は別れの鐘を撞く。互いに気にかけているけど、踏み込まない。徹底的にマレビトなのよね。殺人事件が終われば、刑事も探偵も去っていく。やはりエンディングはすがすがしかった。

金田一耕助
石坂浩二
渥美清
古谷一行
  • 名探偵・金田一耕助シリーズ
  • 1.本陣殺人事件(1983)
  • 2.ミイラの花嫁(1983)
  • 3.獄門岩の首(1984)
  • 4.霧の山荘(1985)
  • 5.死仮面(1986)
  • 6.香水心中(1987)
  • 7.不死蝶(1988)
  • 8.殺人鬼(1988)
  • 9.死神の矢(1989)
  • 10.薔薇王(1989)
  • 11.悪魔の手毬唄(1990)
  • 12.魔女の旋律(1991)
  • 13.八つ墓村(1991)
  • 14.悪魔が来りて笛を吹く(1992)
  • 15.女怪(1992)
  • 16.病院坂の首縊りの家(1992)
  • 17.三つ首塔(1993)
  • 18.迷路の花嫁(1993)
  • 19.女王蜂(1994)
  • 20.悪魔の唇(1994)
  • 21.悪魔の花嫁(1994)
  • 22.呪われた湖(1996)
  • 23.黒い羽根の呪い(1996)
  • 24.幽霊座(1997)
  • 25.獄門島
  • 26.悪魔の仮面(1998)
  • 27.悪霊島
  • 28.トランプ台上の首(2000)
  • 29.水神村伝説殺人事件(2002)
  • 30.人面瘡(2003)
  • 31.白蝋の死美人(2004)
  • 32.神隠し真珠郎(2005)
鹿賀丈史
豊川悦司
上川隆也
稲垣吾郎

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