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[レビュー2013年04月20日に発表された 

劇場版 STEINS;GATE 負荷領域のデジャヴ

Steins;Gate: Fuka Ryoiki no Deja vu

心理描写が足りない

テレビアニメがきれいに終わったので、後日談(劇場版)は蛇足と思っていたが、奇跡の代償という切り口はおもしろかった。しかしどうにも演出が足りない。劇場版だから時間はあるはずだが、ストーリーを練り込む余裕がなかったのか? 全6話のOVAでリリースすれば、ちがった仕上がりになったかもしれない。

奇跡を起こした代償として、岡部は消失してしまう。紅莉栖はなんとか救おうとするが、リスクを知る岡部は消失を受け入れる。時間跳躍を繰り返すたび紅莉栖は疲弊し、岡部がどれほどの苦難を乗り越えたか思い知る。

これはテレビシリーズになかった視点なので、とても嬉しい。紅莉栖が岡部の欠落を埋めるため、鳳凰院凶真を演じるシーンも物悲しい。
ただ、それぞれのシーンで不可解な反応が散見される。大きなところでは鈴羽が跳躍してきた理由、小さなところでは紅莉栖がラボメンに「思い出さないで」というところ。少しずつセリフやシーンが削られているような感じ。すべての問題をキスで解決するのも安直に見える。もちろんキスの価値は十分承知しているが、そこに至るまでの積み重ねが足りないというか、インパクトが弱いというか。たとえば紅莉栖がヤング岡部を押し倒し、ねじ伏せ、強引にキスして、抱きすがり、泣きわめいて愛を口にして、それでいてヤング岡部が「この女性は異常者ではない」と思うくらいの奇跡があってもよかったかも。

岡部はホラ吹き男爵である。理性ある人々は、岡部の話を真に受けないだろう。しかし彼はまちがいなく世界を救った勇者なのだ。しかし世間の喝采を、岡部自身も求めていないだろう。ホラ吹き男爵に社会的成功は似合わない。しかし理解者はいてほしい。それが紅莉栖だ。紅莉栖は同じ苦難を乗り越えたことで、岡部と同じ境地に立った。これは本当にうれしいことだ。

ほんと、切り口は素晴らしい。劇場版にふさわしいストーリーだ。
それゆえもう少し丁寧に描いてほしかった。

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