ザ・ロード The Road

2009年 外国映画 3ツ星 文明崩壊後

旧世界のモラルは新世界で役に立つか?

文明崩壊後のアメリカが舞台だが、ゾンビも異次元も登場せず、ひたすら親子が旅するだけの映画。物語としての盛り上がりはないが、最後まで緊張感が途切れなかった。人間が生き残っているだけで、めちゃくちゃ怖い。

「向こうにも、似たような親子が座っているかもな」

「いい夢を見始めたら注意しろ」

息子は世界が終わったあとに産まれた。だから青い空も、豊かな実りも、学校の共同生活も知らない。だのにどうしてこれほど善良なのか? 父親はモラルを失うこと(火の喪失)を恐れるが、むしろ善良さが破滅を招かないか心配になる。

新世界で生きていく息子に、父親はなにを残せるか? 旧世界のモラルは、新世界に通用するのか? というテーマなら、このような会話があるべき。

子「どうして人間を食べちゃいけないの?」
父「人間は助け合わなくちゃいけないからだ」
子「でもお父さんはだれも助けないよ」
父「悪いヤツは助けなくていい」
子「いい人と悪い人は、どうやって見分けるの?」
父「......」
子「悪いヤツなら食べていいの?」
父「......」

しかし父親のモラルは、新世界に即していなかった。父親は自由意志を尊重するあまり、母親の自殺を止められなかった。また他人を信用できないから、無用な対立をまねいた。では息子はどうか? 息子は父親より柔軟で、他人を信用したいと思っている。ラストを好意的に解釈すれば、うまくやっていけそうだ。懐疑的に解釈すれば、息子は人喰いかもしれない親子の手に落ちたわけで、なんとも言えない。中途半端だ。

でもまぁ、おもしろかった。
『The Last of Us』や『BEYOND: Two Souls』は、この映画の影響を受けているのかな?

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