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[レビュー2014年10月15日に発表された 

フューリー

Fury

戦争の狂気?

飾ってあるそれではなく、戦場で運用される戦車がかっこいい。塹壕戦の膠着を打ち破り、歩兵を連れて進軍する。ドイツ軍のゲリラ戦によって損耗するが、それでも突き進む。より優秀な戦車には、1対2で打ち勝つ。ドイツは精鋭部隊を、かく座した戦車で甚大な被害を与え、戦況を変える。それぞれのシーンで描かれる戦車戦は、類を見ない緊張感があった。

個人的には、もっと状況説明をしてほしかった。第二次世界大戦における戦車の役割、進化、問題点。大戦末期の戦況。ゲリラ戦の弊害。多くの人は「北アフリカ戦線からの歴戦の猛者」と言われても意味がわからない。背景を踏まえれば、より戦車戦に没入できただろう。

なんの映画?

しかし本作は教養番組じゃないから、説明不足はやむなし。では本作はなんだ? 無垢な新兵が戦争に狂気に蝕まれる過程を描きたかったのか? だとしたらウォーダディー(ブラッド・ピット)の素性を描くべきだった。ウォーダディーはドイツ語を話し、ドイツ人に親切だが、武装SSは絶対に許さない。なにがあったのか? あえて語らないのも演出だが、それではかく座した戦車で、全滅覚悟で戦う判断に納得できない。

ノーマンはあっさりウォーダディーに従う。つまり戦車の中で死ぬことを決める。いくらなんでも唐突だ。ほかの乗組員も躊躇はしたが、最後は死を受け入れた。なぜだ? ウォーダディーは自分の命だけでなく、仲間の命を捨ててでも、ドイツ軍に被害を与えようとしている。なぜだ? ぶっちゃけ、「頭がおかしくなっていた」という説明がもっとも納得できてしまう。それは彼らの決意を軽くしている。

「ウォーダディーはなんで戦うんです? なにがあったんです?」
「知らないし、知りたくもない。知る必要もない。すべては怒りだ」

みたいな会話があれば、テーマが明瞭になったのに。むろん、あれこれ語れば無粋になる。私もウォーダディーや仲間たちの回想シーンを見たいわけじゃない。ただ、「もし自分があの場にいたらウォーダディーに従ってしまう」と思えるような演出をしてほしかった。

戦車戦はおもしろかった。それは確かだ。

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