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[レビュー1994年11月04日に発表された 

フランケンシュタイン (ロバート・デ・ニーロ主演)

Mary Shelley's Frankenstein

響かない狂気と悲哀

私はフランケンシュタインが登場するアニメや映画はけっこう見ているし、メアリー・シェリーの原作も読んでいる。やはり1931年のモノクロ映画『フランケンシュタイン』が与えた影響は大きく、原作に忠実な作品はめったに見られない。

本作は珍しく原作に忠実だが、おもしろくない。原作から変えたところもあるが、変えた意図がわからず、やはりおもしろくない。
おそらく人物描写が足りないせいだろう。ヴィクター・フランケンシュタインを演じるのは、監督でもあるケネス・ブラナー。自分で自分を撮ってるせいか、怒りや悲しみが伝わってこない。むしろナルシズムを感じる。怪物(ロバート・デ・ニーロ)が目と叫びで情感を訴えても、ヴィクターのリアクションが硬くちゃ意味がない。

あるいは...と考える。このくらい自分しか見えない人物こそが、ヴィクター・フランケンシュタインらしいのかもしれない。家柄、容姿、才能に恵まれ、世間の苦労も知らず、ただひたすら死に執着し、そのため死体を棄損することを躊躇せず、恩師の頭蓋骨をこじあけ、恩師を刺した貧民であっても肉体の素晴らしさは率直に認め、これを合成する。で、生まれた怪物をほったらかして逃走。脅されたとは言え、恋人(エリザベス)の首と乳兄弟(ジャスティン)の胴体を合成した。ヴィクターは怪物以上に怪物だから、共感できないのも当然か。

本作は音響がゴージャスで、何度もびっくりした。映像も迫力があって、意味なくアクションシーンがあったり、意味なくカメラが回転する。この派手な演出もまた、ストーリーと噛み合っていない。

私たちが映画で見たいのは、共感できる狂気だ。
これじゃない。


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