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[創作] 2005年06月07日(火)に書いた夢日記

第02夜:2本目の最終電車

第02夜:2本目の最終電車

「あぁ、最終電車が行っちまったぁ!」

 ホームから走り去る電車を見ながら、私は途方に暮れた。時刻は深夜。ほかに客はいない。次の電車もない。ホームは静まりかえっていた。

 この駅で乗り換えるはずだった。
 そのとき、切符がないことに気づいた。あわてて探しはじめるが、今夜は荷物が多すぎた。ポケットの奥からノートパソコンの隙間まで探したけれど、結局、切符は見つからなかった。
(とにかく乗っちゃうべきだった)
 切符がなくても、降りるときに精算すればいい。切符をなくして最終電車に乗り遅れたなんて、馬鹿げてる。まったくもって馬鹿げてる。

 私はネクタイをゆるめて、路線図を探した。打ち合わせの帰りなので、ふだん使わない路線だった。
(どう乗り継げば、家に帰れるんだ?)
 路線を指でなぞっていると、周囲が暗くなってきた。ホームの蛍光灯が次々に消えていく
「や、やばい!」アセっていると、下から案内が聞こえた。
「○×行き最終電車、まもなく△番線に到着します~」
 私は暗闇から逃れるように、階段を下りていった。

(さて、この電車に乗るべきか……)
 この最終電車は、私の家まで届かない。その手前で止まってしまう。そこから先、乗り継ぎの電車があるという保証はない。どうせ帰れないなら、ビジネスホテルを探すべきだ。明日はプレゼンなので野宿は避けたい。ホテルを探すなら、都心から離れない方がいい。むしろ、逆に都心に戻って泊まった方が、明日の朝は便利だ。だが、なるったけ家まで近づいて、そこからタクシーという手もある。

 プシューッ!

 電車のドアが閉まった。私の目の前で。
 2本目の最終電車も去っていった。私は乗らなかった。ふたたび静まりかえったホームで、私は独り、声に出して言ってみた。

「私にとっての最終電車は、さっき乗り遅れた方だ。
 2本目は、敗者復活のチャンスじゃない。
 家に帰れないなら、それはもう乗るべき電車じゃない」

 ホームの蛍光灯が消えはじめる。私は足早に改札口に向かった。自分の判断が正しかったのかどうか、自信はない。しかし、さっきよりずっと気楽になっていた。もう、電車について悩むことはない。状況は悪化したけど、考えることは減った。今は、それが嬉しかった。

 ……という夢を見た。
 なんのことはない。私はもう家に帰っていた。窓の外は、もうすぐ夜明けだった。

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