第12夜:サソリとアイスの当たり棒の関係 dream12
2007年 夢日記1996年ごろの話、私は毎週末、友人宅で遊んでいた。
そこにはゲームセンターで知り合った十数名の友だちが集まっていた。金曜夜、閉店までゲームセンターで戦って、そのあと友人宅に移動、そのまま日曜日まで遊びほうけるのだ。
とにかく人数が多いので、みんなで同じことはできない。
それぞれ勝手にゲームをしたり、麻雀したり、パソコン通信(当時はNifty)したり、漫画を読んだり、コミケの準備をしたり……あるいは寝る人もいた。
◎
ある日のこと、寝ていた私は誰かに起こされた。
「なにしてんの! ほら! 行くよ!」
ねこやぐら氏だった。
この集団の中心的な人物で、さまざまなイベントを企画・実現してきている。よくわからんが、なんかやるらしい。眠いけど、私もついて行くことにした。
連れて行かれた先は、駄菓子屋だった。こんなところに駄菓子屋があったのか。知らなかった。
気がつくと、数名がウホウホ興奮している。
「なにしてんの?」と訊ねると、
「アイスの当たり棒を増やしてるんだ」とねこやぐら氏。
よくわからないが、ある方法を使うと当たり棒を無限に出せる(チェーンヒットする)らしい。すごいウラ技もあったもんだ。
◎
どうやって当たりを連鎖させるんだろう?
ウラ技の秘密を聞き出せないまま、ふたたび部屋に戻ってきた。眠いのでまた寝る。すると今度は黒侠に起こされた。
「どいて、どいて!」
場所をあけると、黒侠はガバッと畳をめくった。
「うぉ?」畳が開閉するとは知らなかった。
のぞいてみると、床下には無数のサソリがうごめいていた。
「ぎゃー!」
黒侠は1匹を取り出し、手に乗せた。よく見ると金属的な光沢がある。てゆうか、メカじゃないの? これ?
「こいつは硬いよ。防御力が999あるからね!」
そういって黒侠はサソリを指ではじいた。カキーンと音がして、ダメージが無効化される。
「硬い、硬いよッ!」ねこやぐら氏も同意する。
◎
世の中、知らないことが多い。
興味はあるけどまだ眠いので、私は部屋の隅にうずくまった。ようやく寝入ったころ、ふたたび起こされた。
「どいて、どいて!」
ねこやぐら氏だった。
私の背後に買い物袋があるらしい。それを渡すとき、ふと、さっきのことが気になった。
「ねぇ、さっきの当たり棒の話だけどさ。あれ、どうやって当ててんの?」
「なんの話?」
「ほら、さっき駄菓子屋に行ったじゃない……」
「ふんふん、それで? それから? ほぅほぅ」
これまでの経緯を私はつらつら説明した。
説明しながら……目が覚めてきた。
「あれ? もしかして、寝ぼけてた?」
「うん、寝ぼけてた」
「ど、どのあたりから……」
「防御力999のサソリが出てきたあたりから現実」
「……」
どうやら私は夢を見ていたらしい。
寝ながら耳に入っていた周囲の会話やゲームサウンドが夢に反映されていたようだ。
「それでさ、どうやってアイスの当たり棒を増やしたの?
つづきを教えてよ。ねぇねぇ!」
戸惑う私に、ねこやぐら氏はうれしそうに訊ねてきた。
私は赤面した。
夢を無防備にしゃべってしまった自分が許せなかった。