第13夜:あざなえる縄のごとし

2007年 夢日記
第13夜:あざなえる縄のごとし

 仕事を辞めて、大学受験することにした。

 なにを今さらと思うだろうが、よく考えたことだ。受験に集中するため、私は会社を解散させた。一念発起。人生を再構築するのだ。

 勉強していると、中学時代の友人・Mからメッセージが届いた。懐かしい! 何年ぶりだろう! 私とMは、同じ高校を目指して勉強していた。彼の方が勉強熱心だったが、合格したのは私だけだった。Mは滑り止めの私立高校に進学することになった。

 高校時代は、あまり顔を合わせなかった。近くに住んでいても、高校がちがえば世界もちがう。中学時代の交流が減ったとしても不思議ではない。ただ私たちには「しこり」もあった。
 高校受験に私は勝って、Mは負けた。
 お互いクチに出さずとも、どこかでそれを意識しあっていた。

 物語はそれで終わらない──。
 Mは高校でかなり勉強したらしい。国立のいい大学に合格したと、人づてに聞いた。一方、私は落ちこぼれていた。高校受験の成功が、私を慢心させていた。つまり大学受験は私が負けて、Mは勝ったというわけだ。

 物語はまだ終わらない──。
 学歴の乏しい私は、まともに就職できなかった。フリーターとなって、やさぐれた日々を送った。なんとか就職できても、解雇、解雇の繰り返し。私は正社員になるのをあきらめ、自分の会社を興した。就職の失敗が、私を強くしたわけだ。
 そういえば10年近くMに会ってない。いま、どこでなにをしてるだろう?

 物語はつづく──。
 会社の業績はよかったが、私は満たされないものを感じていた。なにかが欠けている。その思いは日々つのり、もう誤魔化せなくなった。私の直感が告げているのだ。このままでは負けると。
 だから私は、勉強しなおすことにした。

 そんな折り、Mからメッセージが届いた。しかも、Mも同じように大学受験を目指しているという。よくわからんが、彼にも彼なりの事情があるようだ。20年の歳月を経てふたたび競い合えることを、私は喜んだ。

 私とMの部屋で勉強することにした。
 20年前と変わらない日々。しかし私は勉強に集中できずにいた。落第してもなんとかなるサと、油断しきっている。これじゃ駄目だ。Mは黙々と問題集を解いている。
 ヤバイ……すごくヤバイ。なんだか現実感が乏しい。
 しっかりしろ! 現実をよく見るんだッ!

 という夢を見た。
 もちろん、Mからのメッセージなど届いていない。