創作  2008年08月21日(木)に書いた 夢日記

第20夜:なつかしエール

第20夜:なつかしエール

 しぶりにぐっすり眠れて、目覚めのいい朝だった。

 背広に着替えて、会社に向かう。すると駅で昔の友人Mに出会った。
「数年ぶり? いや十数年ぶり?」
 さいわい向こうも私を覚えていたので、駅のホームで立ち話をする。

 気がつくと足下の鞄がない。盗まれた! あわててホームを探すが、見つからない。ふと、鞄に携帯電話が入っていたことを思い出し、Mに電話してもらう。すると団地の方から着信音が聞こえてきた。
 私は音の鳴る方に向かうが、Mは出社時間なので別れることに。もっと話したかった。

 団地から出てきた女性が、私の鞄を持っていた。声をかけると、それは中学時代の同級生、N子だった。N子も私を探していたようだ。事情がよくわからないが、懐かしさが上回った。私はN子に誘われるまま、昼飯を食べることに。まだ早いけど、座って話せた方がいい。

 オープンエアの席に座ると、ギャルソン(給仕)の顔に見覚えがあった。えぇと、誰だっけ?
「お久しぶりです。ヒラ様」
 と微笑まれて、調子を合わせる。誰だっけ?
 N子がビアジョッキを注文していたので、私もヴァイツェンを飲むことに。昼間から飲むビールがうまい。

 N子はイラストレーターになっていた。原稿に詰まっているというので、スケッチを見せてもらう。アフリカ旅行の絵日記で、よく描けてる。N子にこんな絵が描けるとは思わなかった。率直に感想を言うと、照れるN子がかわいかった。

「お久しぶりッス、ヒラさん」
 名前を呼ばれて振り向くと、数年前に退職したIが立っていた。今はこの店でバイトしているらしい。なんという奇遇。N子に紹介しようと思ったら、事務所に行かなきゃと席を立ってしまった。もう夕方だった。風が涼しい。

 帰ろうとしたところに、あのギャルソンがやってきた。
「ヒラ様、1つ、お知恵を拝借したいことがございます」
 かしこまった口調より、彼が向かいの席に座ったことに驚いた。ギャルソンが座ってもいいのかな? それはともかく、彼の頼みは今年の金賞ビールを当てることだった。そんなことを言われても私にわかるはずがない。するとギャルソンは、下の階を指さした。

 2階席から見下ろすと、初老の男がいた。独りでソーセージを食べ、ビールをあおってる。あの老人はビールの審査員で、これから注文する5種類のうち1つが金賞に選ばれるそうだ。そこで私も同じビールを飲んで、1つを選んでほしいという。私は受けて立った。

 ジョッキで5杯も飲むと、2杯目あたりを忘れてしまう。すると初老の男も2杯目のビールを注文するので、私もそれに倣う。私が飲みたいビールを注文するので、親近感がわいてきた。ソーセージをかじり、ジョッキをあおるタイミングも似てくる。私はいま、彼と同じ感覚を味わっている。

 私は席を立ち、初老の男に挨拶することにした。もつれる足で老人に近づく。
「ちょっと、いいですか?」
 老人が振り向いたところで目が覚めた。

 久しぶりにぐっすり眠れて、目覚めのいい朝だった。
 でもちょっと、頭が痛かった。

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