第24夜:爆弾劇場
2008年 夢日記《お配りした指輪は、1分に1個ずつ爆発します》
黒いスクリーンに白い字幕。手書きのような字幕フォント。
(どういう意味だろう・・・?)
観客席で私は、次の変化を待った。
《現在、全世界に指輪をはめた観客が150万人います》
指を見ると、金色の指輪がはまってる。
『ロードオブザリング』に出てきた"1つの指輪"に似ている。劇場の入り口で配っていたから、ここにいる観客全員が指輪をはめている。全世界でみると、私は150万分の1だな。
《指輪は外せません》
試してみると、たしかに抜けない。指輪は指に接していないのに、びくともしないのだ。
(むむ、こりゃ、どういうわけだ?)
悪戦苦闘していると、周囲の客は指輪をいじっていないことに気づく。ばつが悪いので、私もおとなしく映画を観ることにした。
そのとき、2階席でバシュッと音がした。
見上げると、席が1つ消えている。爆発した瞬間、エネルギーが内向きに縮退して、空間ごと消失してしまったようだ。うっすら煙が立ち上っているが、両隣の席に影響はない。
《上映開始から、7分が経過しました》
スクリーンに新しい字幕が表示される。
タイミングが絶妙で、席を立てない。上映中の移動は迷惑だから避けたいし、私はクレジットロールが終わるまで席を立たない主義だ。
・・・って、そうじゃない! 人が爆発してるんだぞ!
これはフィクションじゃない!
《指輪は、指のサイズによって伸縮します》
1分経った。世界のどこかでまた1人爆発したのだろうか? 次の爆発は自分かもしれない。爆発したら、あっと思うまもなく消えてしまう。早く席を立たなければ!
(しかし......席を立ってどうする?
劇場を出たら爆発するかもしれないし、もう少し映画を見れば、指輪を外すヒントが出てくるかもしれない......)
重力に抗しきれず、ふたたび腰を下ろしてしまう。
待てば待つほど死ぬ確率と、助かる確率が高まっていく。
《この映画は147分です》
誰も席を立とうとしない。そういう自分も座ったままだ。
みんな、ピンチを認識しているんだろうか?
いや、他人は関係ない。自分がどうするかだ。
私は席を立って、劇場後部にあるドアに向かった。背をかがめ、ほかの客の迷惑にならないように小走りする。そして赤いドアの前で凍り付いた。
(ドアを開けても大丈夫なのか?)
考えても仕方ない。イチかバチかだ!
あごを引っ張られるように、私はスクリーンをふり返った。
《どうか落ち着いてください》
ひ、非常にヤバイ!
◎
という夢を見た。
最近は似たような夢を連続して見ている。なんか意味があるんだろうか?
まじめに考えると、現実と字幕がリンクしている保証もない。それらしい説明をうのみにしているだけだ。私は指輪が爆発したところを見ていないのだから。