第35夜:世界の果てのビデオ鑑賞会

2010年 夢日記
第35夜:世界の果てのビデオ鑑賞会

 某所で、6人のオタクがビデオ鑑賞会を開いていた。

 ここは広くて暗い部屋──いや、部屋というには広すぎる。どこかの倉庫だろうか。
 暗い。窓も照明もないから真っ暗だ。照明はあるかもしれないが、スイッチの場所がわからない。いまは昼なのか夜なのか、朝なのか?
 倉庫の奥に1台のテレビがあって、その光でぼんやり周囲が見える。壁はびっしりビデオラックで覆われていて、膨大な量のビデオカセットが収納されている。私たちはそれを片っ端から見ているのだ。

 換気されてないから、蒸し暑い。みんな、じっとり汗をかいている。上半身ハダカになった者もいるが、シャツを着ている方がマシだろう。
 地下室のような感じもするが、遠くから雨の音が聞こえてくる。外はずっと雨。空の栓が抜けたように、いつまでも、いつまでも降りつづけている。

(ひょっとして、密閉されているのではないか?)

 そんな不安もよぎるが、確証はない。確証はないが……ドアがないんだよね。壁はビデオラックで埋まっているし、天井は暗くて見えない。テレビの光が届かないところは行かないようにしてるから、どれだけ広いかわからない。
 ここにあるのは膨大な量のビデオと1台のテレビ、それを取り囲む6人のオタクだけ。

「あ、それ、見たことある」
「じゃ、これは?」
「ない」「ない」「ない」「ない」「ない」
「誰も見てないので、再生」
 オタクたちは、誰も見たことがないビデオのみ再生していた。しかしオタクが6人も集まれば、たいていのビデオは誰かが鑑賞している。20本くらいもってきても、再生できるのは2、3本くらい。それを見終えると、また新しいビデオを集めてくる。その繰り返し。

 私もかなりの数のビデオを見ている。見てないビデオは、つまり「見る価値ナシ」と判断されたもの。見たいけど見ていないビデオもあるが、ほかのオタクが見てるのでスルーされてしまう。
 オタク6人がそろって「見る価値ナシ」と判断しただけあって、再生されるビデオは本当につまらないものばかり。最低最悪と言うほどの個性もない。

 なんでこんなことをしてるんだろう?
 なんか……やらなければならないことがあったような気もするけど……。

 雨は降りつづける。
 世界が終わるまで、ここでビデオを見てるのもいいかもしれない。

 という夢を見た。
 よく考えてみると、夢の光景は「焚き火」に似ている。火を消さないように、交代で薪を拾ってくるような。焚き火は酸素を消費するが、テレビなら大丈夫。6人のオタクは、テレビを消さないよう、ビデオを継ぎ足していたのかもしれない。

 まぁ、夢に合理的な説明なんてないけどね。