創作  2013年06月06日(木)に書いた 妄想リメイク

[妄想] HINOKIO ヒノキオ

[妄想] HINOKIO ヒノキオ

踏み込む覚悟はあるか?──

まえがき

『HINOKIO』は2005年公開のSF映画。遠隔操縦するロボット転校生というアイデアがおもしろい。CG合成も違和感がなく、たまらなく興奮した。しかし中盤以降はグダグダで、アイデアに見合う結末が用意されていなかった。で、私が期待するストーリーを書き出してみた。

HINOKIO
HINOKIO ヒノキオ

ロボット転校生

 ジュンは粗暴な小学生。ある日、ジュンの教室にロボットの転校生がやってきた。この町は電脳特区に指定されているため、いろいろな「試験的導入」が行われているが、それにしても驚いた。
 サトルと紹介されたロボットは、AI制御ではなく、人間の小学生が遠隔操縦しているそうだ。つまり、サトルという子どもがどこか遠くにいて、カメラ越しにこちらを見て、ロボットの手で触れてくるのか。
「おもしれー」
「気持ち悪い!」
 生徒の反応はまちまちだ。委員長がサトルの素性について質問したが、先生は事情があって答えられないと言う。なぜ素性を隠すのか? そうまでして学校に通いたいのか? さっぱりわからない。
 材質に檜が使われていることから、「ヒノキオ」というあだ名を付けられた。

HINOKIO
ロボットが転校してきた

 先生が去ると、ヒノキオ(サトル)は好奇の目にさらされた。いろんなことを質問されるが、サトルはきわめて口数が少ない。病気や怪我なら隠すことはない。なのでヒキコモリの御曹司だろうと子どもたちは結論づけた。サトルも否定しなかった。

 ジュンは子分たちとサトルをいじめるが、暖簾に腕押しで疲れてしまった。
「ばっかじゃないの? ロボットだから殴っても痛くないのよ」
「うるせぇ。そういうことじゃない!」
 委員長に言われて、ジュンは考える。べつにヒノキオを苦しめたいわけじゃない。どうすれば自分が納得するのか、よくわからない。

仮面友情

 ヒノキオはサッカーが得意で、見事なシュートで喝采を浴びた。多くを語らないが運動に詳しく、テクニックや疲労回復の知恵を教えてくれた。クラスメイトは徐々にヒノキオを受け入れていった。

HINOKIO
ヒノキオは寡黙なやつだった。

 むしゃくしゃしたジュンは、ヒノキオを呼び出して喧嘩する。ヒノキオは無抵抗だったが、高校生にからまれたときは俊敏な動きで撃退した。ヒノキオは強いのに、戦おうとしなかった。ジュンは悔しがるが、ヒノキオも悔しがっていた。
「この身体は借り物だから、本気になれない。悔しいよ。悔しい」
 サトルは泣いているように見えた。
「なぁ、おまえの素性は言えないのか、言いたくないのか?」
「言いたくない」
「わかった。なら、聞かねぇよ」
 その日から、ジュンはサトルと友だちになった。委員長はジュンの短絡思考を馬鹿にするが、気にならなかった。

HINOKIO
気が付くと、仲よくなっていた。

仮面交際

 サトルは学校一の美少女スミレに言い寄られる。ジュンが盛り上げ、遊園地でダブルデートすることになった。
 サトルとスミレ、ジュンと委員長のペア──。
 ジュンはサトルの恋路に興味津々で、委員長は不満そうだった。

 スミレは恋に恋する少女だった。早く男子と素敵な恋をしたいけど、中途半端な相手はいや。ひとりで歩くと目立つし、女子の集団行動もきらい。その点、サトルはスペシャルだから都合がいいと言う。
 あけすけな物言いにサトルは面食らった。サトルが遠慮したいと言うと、スミレは怒った。たわいのない口論の末、スミレが切り込んだ。
「それじゃなんのために学校に来てるの? どうして顔を隠してるの? ロボットで通学すれば目立つのは当たり前でしょ。注目されて、かまってほしかったんじゃないの?」
「ちがう」
「サトルくんがヒキコモリなのか、病気なのかは知らないけど、仮面をかぶって登校するだけの覚悟はあったんでしょ?」
「ちがう!」
 サトルが立ち上がると、スミレがたたみ込む。
「ここで逃げちゃ意味がないでしょ。私のことが嫌いでもいいから、最後までデートしましょう」
 話を聴いていたジュンが割って入る。
「サトル。我慢するだけが人生じゃない。いやなときはいやでいいんだ。今日は帰ろう」
 ジュンとサトルが帰って、スミレと委員長が残された。スミレがつぶやく。
「あなたも大変ね」
 委員長は無視した。

HINOKIO
スミレは恋に恋する少女だった。

告発

 委員長はクラスメイトを煽って、正体を隠すサトルと学校を弾劾した。マスコミを呼び寄せ、「なにかの実験に付き合わされている」「ロボット兵器の試験運用ではないか」と焚きつけた。また親から学校に圧力をかけた。根負けした担任は、ある住所を教えた。病院の住所だった。
 ジュンは止めようとしたが、好奇心を抑えられず、傍観してしまう。

HINOKIO
あいつのことを知りたい。

 委員長がクラスメイト(サトルはいない)を率いて病院に向かう。病院では白衣を着た男性が待っていた。

「私は医者ではなく、科学者だ。サトルの叔父にあたる。
 サトルは両親と妹は、2年前の交通事故で亡くなった。サトル自身も重症を負った。おそらく二度と自分の足で歩くことできないだろう。1年間はほぼ昏睡状態だったから、きみたちより1歳、年上になる」

 科学者の部屋で説明を聞く生徒たち。モニタにサトルの写真やビデオが表示される。サトルはサッカー選手を目指す明るい少年だった。両親と妹の写真もあった。
「これが、サトルなの?」
「そうだけど、今はちがう。いまのサトルを見ても、同じ人物とわからないかもしれない。事故の写真や治療とリハビリの様子も記録してあるけど、キミたちには見せられない。ショッキングな映像だからじゃない。サトルが、見られたくないと言っているんだ」
「どうして、こんな、サトルは、黙っていたんだ」
 ジュンが泣きそうになる。
「サトルをロボットに接続し、通学するよう薦めたのは私だ。サトルは、実験に協力する条件として、自分の素性を隠したいと言った。サトルは同情されたくないんだ。いまの自分を知られたら、ふつうの関係は築けないと思っている。
 それでもきみたちは、サトルに会いたいか?」

 クラスメイトたちは声を失った。やがてジュンが言った。
「おれは、会いたい。サトルに会って、恥じることなんかないって伝えたい」
「どうする? サトル」
 びっくりして振り向くと、ヒノキオが立っていた。ただのモックと思っていたが、いつの間にかログインしていた。
「あとは、きみたちの時間だ」
 科学者が席を立つ。

HINOKIO
サトルは病室から出られない。

 足が車輪になったヒノキオのプロトタイプが案内する。
「こっちだよ」
 謝ろうとするジュンに、サトルは言った。
「なにも言わないでくれ。みんなが来てくれて、嬉しいような気もする。よくわからない。登校したばかりのころは、知られたら学校をやめると思っていた。だけど今はわからない。みんなが見たいと思ったように、ぼくも見てもらいたいのかもしれない。わからない」
「・・・」
「ぼくは病室から出られない。それからヒノキオなしじゃ目が見えない。でも耳は聞こえるし、しゃべることもできる。機材がたくさんあるから気をつけて。ドアの向こうで待ってる」
 ヒノキオが停止した。ログオフしたようだ。
 ジュンがノックすると、かすれた声が聞こえた。
「どうぞ」サトルの声だ。
 ジュンがドアに手をかけると、スミレが止めた。
「待って。ここから先は、遠慮しておく」
「私も」「ぼくも」
「わかった。外で待っててくれ」
「あたしは行くわ」
 ドアを開けたのはジュンと委員長だった。

エピローグ

 十数年後──。
 成長した子どもたちが同窓会を開いた。ジュンは教師に、スミレは銀行員になっていた。スミレは結婚できず、不満がたまっているようだ。

 お店の入り口でまごつく2つの影があった。
「入りましょう」
「やっぱりボクはいいよ」
「なに言ってるの。あなたがいないと私が困るじゃない」
 ジュンがドアをあけると、大人の体型にチューンナップされたヒノキオと委員長がいた。委員長は赤ん坊を抱いている。
「おぉー! ヒノキオだ。でっかくなったなぁ」
「委員長! わは、赤ん坊だ!」
「委員長はやめてよ」
「ボクはヒノキオでいいよ」
「いいから入んな。みんな、ふたりを待ってたんだ」
「ありがとう」
「え?」

「ありがとう」

おわり

 ロボットを媒介しても人間関係を築けるか?

 この映画のプロットはそこにあると思ったので、私なりの回答を考えてみた。明るい未来を描きつつ、安直にならないようにした。委員長はサトルの事情に踏み込みすぎたため、無関係でいられなくなった。唐突な印象もあるが、あんがいそんなものだと思う。

 同じプロットで複数の回答を導き出されるだろう。生身よりロボットに好感をもてたり、テレメーターによる監視が気になったり、いつの間にか操縦者が入れ替わったり、本当のAIが混じっていたり。ヒノキオ2号、3号でオムニバスも作れそうだ。

コメント (Facebook)

思考回廊 創作
[妄想] HINOKIO ヒノキオ