創作 / ショートショート (100) 1,000文字でショートショートを書いてみよう
第100話:夜の渚にて
「ねぇ、希望はあったのかしら?」 カナミが不意に訊ねてきた。 どう答えるか迷ったが、質問が過去形と気づいて、ハッキリ答えることにした。 「なかった。今なら断 ...more
第99話:就職戦線、異状なし
「課長のやり方はおかしいですよ!」 喫煙所でくつろいでいると、後輩のヤスオが主張しはじめた。なにかと思えば、人事採用の話だった。 「さっき課長の部屋に行ったら ...more
第98話:呼び出された悪魔
「悪魔よ! 去れッ!」 その瞬間、神父のかざした十字架がストロボのように光った。いや、光ってない。十字架が光るわけがない。だけど私の魂は閃光を感じていた。 ...more
第97話:執行猶予の三悪人
「いつか自由の身になれるのかなぁ?」 またプラトンが哲学的なことを言い始めた。飽きもせず悩めるもんだ。プラトンは文句が多いけど、仕事はきっちりこなすからいい。 ...more
第96話:アン・ノウイング
「なぜ信じない? すべて予言されていたんだ!」 ケイジの話を聞いていると、だんだん信じてしまいそうになる。除籍されたとはいえ、ケイジは大学教授だったから、その ...more
第95話:ツンデレは心の中にあり
「ツンデレはさ、心の中にあるんだよ」 おれはそう呟いて、ビールを飲み干した。お代わりを注文すると、ヒデも追従する。 「なにそれ? その、サキさんって女の子の話 ...more
第94話:世間様が見ている
「みなさんが言う"SEKEN様"って、なんなんですか?」 意を決し、私はホストのアサミさんに尋ねてみた。せっかくホームステイしているのだから、この国の文化を学 ...more
第92話:大いなる継承
「もうすぐ、《継承の儀》がはじまるんだね!」 となりでマナがひとり興奮してる。儀式がはじまるまで、私を落ち着かせてくれる約束だったのに。幼なじみの私がオヤシロ ...more
第91話:明日からの助言
「明日のデートは止めておけ」 振り返ると、背広を着た男が立っていた。 夜の神社に自分ひとりと思っていたから、びっくりした。そして男の顔を見て、奇妙な感覚に襲 ...more
第90話:罪を憎んで人を憎まず
「主文、被告を"人格矯正刑"に処す」 裁判長の言葉に、法廷はどよめく。次の瞬間、ぼくは立ち上がっていた。 「ま、待ってください! それじゃ、被告の望み通りじゃ ...more
第89話:とあるオタクの会話
「ナマの女って、そんなにいいもんかね...」 コイツは藪から棒になにを言い出すのか。 さいわい午前中のファミレスに客は少なく、ぼくら会話に注意を払うものはい ...more
第87話:関係の禁断
「おれ、卒業したくない。ずっと先生といっしょにいたい」 やるせない横顔を見せるミキヤ。 その瞬間は、額縁に入れて飾っておきたいほど美しかった。この瞬間を見る ...more
第85話:私はここにいる
宇宙船が燃えている。 起こるはずのない事故が起こってしまった。絶対不変の船体に、赤黒い腐食が広がっていく。基幹部を守るため、まだ乗員が残っているブロックも切 ...more
第84話:顔と名前とココロの不一致
「たとえ姿形は変わっても、あなたはシュウジさんです!」 病院のベッドで目覚めたぼくを、2人の美女が迎えてくれた。黒髪で和服の似合うスミレさん、茶髪ショートヘア ...more
第83話:トリフィドの涙
「ユミさん、今日は包帯を外しますよ」 医者の声に身が震えた。この2ヶ月、私の視界を覆っていた包帯が、はらり、はらりと解かれていく。ふたたび目蓋を開いたとき、世 ...more
第82話:お酒のチカラ
「嫁の浮気相手は、ぼく自身なんだけどね」 数年ぶりに再会した学友・シンジは、なにやら重い悩みを抱えていた。妻・エリコさんが浮気しているそうだが、話がよく見えな ...more
第81話:魚心あれば水心あり
「ケンジくん。悪いね、草むしりなんかさせちゃって」 主任が申し訳なさそうに声をかけてきた。ぼくより年下で、ぼくより低学歴だが、この会社では先輩であり上司だ。 ...more
第79話:新型メタボ対策
「カズオさん、起きてください!」 いきなり布団を剥ぎ取られ、ぼくは床に転げ落ちた。 窓が開いていて、冬の寒気に体温を奪われる。ぼくはベッドに戻ることも、布団 ...more
第78話:ブリガドーンの約束
「ま、待ってくれ! まだ地球を破壊しないでくれッ!」 たまらず、おれは祭壇の前に飛び出してしまった。 ゆらゆら詠唱していた人影が、ぴたりと立ち止まる。振り向 ...more
第77話:ママの野望
「あなたは娘の幸せを考えてないの?」 夜、娘の進路について話をしていたら、嫁の「スイッチ」が入ってしまった。いわゆる説教モードだ。こうなると手に負えないが、か ...more
第76話:ストーカー被害
「最初は、配達ミスだと思いました」 語りはじめたクミコは、30代半ばのOL。仕事一筋に打ち込んできたので、独身・独り暮らし・彼氏ナシ。「女性の社会進出」の最前 ...more
第75話:恐怖の引き継ぎ
「ハードな仕事だって、言っておいたよね?」 着任早々、一ヶ月で辞めたいと言い出した若者に、私は強い口調で言った。 若者は「すみません」を繰り返すばかり。これ ...more
第74話:さまよえる生き霊
「おまえ、まだ生き霊に悩まされているのか?」 げっそり痩せた同僚のタカミチを見て、おれは心配になった。大丈夫と答えるが、ぜんぜん大丈夫じゃない。いまも会議中に ...more
第72話:彼女をコントロール
「やめて、今夜はそんな気分じゃないの」 そう言ってマリコはそっぽを向いた。毅然とした口調だが、おれは強引にベッドに押し倒す。 「いや! よして!」 強い力で ...more
第71話:変質者の均衡
「かわいすぎる娘をもった父親の苦悩が、おまえにわかるか!」 おれはなにも言わず、ただうなずいた。ここで機嫌を損ねるわけにはいかない。 お父さんも話を聞いても ...more
第70話:作品と作家は同一ではない
「ジロウさん、あたし、スタジオを辞めようと思うの」 ユミちゃんが突然ヘンなことを言うので、ぼくはコーヒーを噴いてしまった。 原稿をもっていたので、あわてて2 ...more
第69話:名女優の素顔
「ねぇ、まだ私の素顔を見たい?」 意識を取り戻したチヨコさんは、唐突に切り出した。 枕元の夫のゲンゾウ氏も戸惑っていたが、ハッキリした声で答えた。 「あぁ、 ...more
第68話:国産の癒しツール
『きみがこの手紙を読むころ、ぼくはこの世にいないだろう。 ぼくは政府の秘密を知ってしまった。そのことを、きみに伝えておきたい。 いや、きみは知っているはずだ ...more
第65話:作品づくり
「くだらない仕事はやりたくない!」 タカユキはぷいっと顔をそむけ、ゲームを再開した。その幼稚な態度に、私はむっとした。 「くだらない仕事かどうか、書類を見なさ ...more
第64話:過去を捨てた女
「お母さん、なんで今ごろ?」 カスミの声は震えているが、強い非難が込められていた。無理もない。幼少時に自分を捨てた母親が突然、現れたのだ。恨み言もあるだろう。 ...more
第63話:死んだ主人が日記を書いています
死んだ主人が日記を書いています。 もちろん主人でないことはわかっていますが、そう思えてなりません。 この気持ちを、どう整理すればいいでしょう? 主人の趣 ...more
第62話:蜜の流れる地
「わわっ、なにこれ? すごい!」 なんという甘さ、スーッと溶ける爽やかさ! 爺ちゃんが取り出したハチミツは、たとえるもののない天上の甘露だった。 「どうだ、 ...more
第61話:歴史に残る仕事
「ぼくはこの仕事に向いてないのかもしれません」 昼休み、弁当を食べ終えたタケルは深いため息をつき、遠くを見据えた。 いつもの陽気さは影もない。よくない兆候だ ...more
第60話:部屋とセーラー服と私
「これって、セーラー服?」 つきあって4年になる彼氏の部屋で、セーラー服を見つけてしまった。 ベッド下の紙袋に入っていた。 きょろきょろ周囲を見渡す。 ...more
第59話:本気のしるし
「先生、私、初めてじゃないよ」 放課後の教室で、ミユキはぼくの机に腰掛けた。書類が床に落ちる。 「なにが、だだれと、どうして?」 感情が逆流して、うまくしゃ ...more
第58話:吾輩は犬である
吾輩は犬である。 名前はあるかもしれないが、とんと見当がつかぬ。 ご主人様との関係は、おおむね良好。 そう思うのは、散歩の回数が多いからだ。昨年あたりか ...more
第57話:保証された権利
「いつ、だれと結婚するかは、あたしが決めることでしょ!」 怒鳴られて母さんはしょんぼりした。 言いすぎたかもしれないけど、押し切るしかない。 私は絶対にヨ ...more
第55話:スタンドアローン
「目が覚めたかい?」 ぼくは、ボクに声をかけた。 ボクは身体を起こして、機械の頭を振る。 「ここは宇宙船?」 「ぼくの棺桶になるところさ」 機械のボクは、 ...more
第54話:ブラック・ウィドー
「ついにブラック・ウィドーを妻に娶ることができた」 きょう、80歳の誕生日を迎えるカツシゲ翁は、微笑みながらグラスを掲げた。 「いやだわ、そんな言い方されては ...more
第53話:アーバンライフ
「あれ? 母さん、どうしたの?」 アパートに帰ると、ドアの前に母さんが立っていた。 「なに言ってんの、ミホ。今日、泊まりに来るって言っておいたでしょ」 ヤバ ...more
第52話:呪われた会社
「ユミちゃん、この会社はヤバイよ!」 幼なじみのシロウは、青ざめた顔で訴えた。 霊感の強い人だから、なにか言うとは思っていたけど、こんなに真剣だとシャレにな ...more
第51話:モリアーティ
「今回も解決できましたね、教授!」 ジェーンの賞賛に、教授は不機嫌そうにそっぽ向いた。「ふん」と鼻を鳴らすが下品さはない。すねても英国紳士だった。 「個別の事 ...more
第50話:シャーロック
「ホームズさんが死んだって、本当ですか?」 真っ青な顔で叫ぶレストレード警部に、ワトソンは静かにうなずいた。 「ライヘンバッハの滝で、モリアーティ教授もろとも ...more
第49話:アレルギー×アレルギー
「えぇ! 自宅で海老を食べてるのー?」 トモミの告白に、素っ頓狂な声をあげてしまった。居酒屋の注目が集まる。 「チーちゃん、声が大きい」 私たちは身体をかが ...more
第48話:あらしのよるに流されて
「男と女の友情は成立するのかしら?」 サヨコの質問に、ぼくは唾を飲み込んだ。 (どうして、いま、そんなことを訊くんだろう?) ぼくの答えを待たず、サヨコは言 ...more
第47話:無礼講の罠
「今夜は遠慮なく意見を聞きたい。無礼講で話し合おう!」 合宿初日の夜、全従業員を集めたホールで、社長が宣言した。 だが、その言葉を信じる従業員はいない。なに ...more
第46話:悪魔の弁護
「私、悪魔なんです」 少女は抑揚のない声でつぶやいた。 つややかな黒髪と、白いブラウスの対比が印象的だ。しかし接見に訪れた弁護士は、発言を聞き流した。 「き ...more
第45話:モテモテの代償
「おれをモテモテにしてくれる? なんで?」 トシオの質問に、黒服の男は汗をぬぐいながら答えた。 「理由は、その、ご説明できませんが、はい、モテモテになります」 ...more
第44話:夫婦の食卓
「ちょっと! あんた、味がわかってんの?」 ある日、晩飯を食べていたヒデは、嫁さんに注意された。突然だったので、なんに怒っているのかわからない。相づちを打ちつ ...more
第42話:ガードレール
「こらっ! 道を外れちゃ駄目じゃないか」 登山コースから外れた子どもを見つけた私は、列に戻るよう注意した。しかし最近の小学生は先生の言うことを素直に聞いてくれ ...more
第41話:最果ての戦場
「ちくしょう! 司令部はなにを考えてるんだ?」 レイジ少尉はゴミ箱をけっ飛ばした。おれは肩をすくめ、読書に集中しようとしたが、レイジの怒りは収まりそうにない。 ...more
第40話:愛し方、愛され方
「やっぱり別れよう」 ケイスケさんは突然、切り出した。結婚して半年。これからと言うときに信じられない。 「やっぱり、ユリ姉さんのことが忘れられないのね」 目 ...more
第39話:予定があると安心する
「お客さんは、フランスの哲学者ジャン・ギトンをご存じですか?」 窓の外をぼんやり見ていた私に、運転手が話しかけてきた。本当に話し好きな運ちゃんだな。浮かない声 ...more
第38話:恋する心臓
「恋をしてるのは、あたしの心臓かもしれません」 なぜここで恋の相談を? と思ったけど、サトコの表情がこわばっていたので、話を聞くことにした。胸をぎゅっと押さえ ...more
第37話:ホトケの舌
「どうなさいました? 部長」 ミカに声をかけられ、我に返った。 打ち合わせがてら食事をするため、レストランにやってきた。そこでグラスに入った水を飲んでいたん ...more
第36話:壁の向こう側
その国の端っこに、大きな"壁"があった。 壁の向こう側を見たものはいない。 より正確には、壁の向こう側を見たものは例外なく、こちらに戻ってこないのだ。だか ...more
第33話:裸の女王様
『裸の王様』ってさ、どうしてハダカになっちゃったのかな? いくら王様がバカでも、いきなり透明な服は着ないと思うんだよね。つまり、いくつかの段階を踏んでから、 ...more
第31話:読書する力
「カズユキ、今こそおまえの協力が必要なんだ!」 革命志士であるおれは、カズユキの家で机を叩いた。しかしカズユキは動かず、本を読みつづけている。今日という今日は ...more
第30話:アラン・スミシー
「えぇと、アラン・スミシーをご存じですか?」 私が黙っていると、電話の向こうの担当者はていねいに説明してくれた。 「アラン・スミシーは映画監督の名前です。 い ...more
第29話:ニートの王様
「おまえ、まだ働いてなかったのかッ!」 強い口調で叱咤したのに、アユミはテレビから目を離さず、「んー」とだけ答えた。布団に横たわって、細い足をぶらぶらさせている ...more
第27話:舞踏会の手帖
「で、爺さんはこんな田舎まで、なにしに来たんだい?」 道を尋ねた青年とつい話し込んでしまったが、これもなにかの縁か。 バスが来るまであと1時間。 少し長く ...more
第26話:浮気の代償
夫が浮気している。それは、信じられないことだった。 夫のシンスケは大学の助教授で、私は元・教え子。プロポーズされたときは、正直迷った。年齢差もあったし、シン ...more
第24話:ウサギとカメと
あの2人を見てると、人生について考えてしまう。 タカシとヤスオ──。 2人は同じ年の春にやってきて、同じ仕事に着任した。2人とも若く、背格好も似ていたので ...more
第22話:私のヒーロー
「あの夜、ぼくはきみに姿を見せてしまった」 私は黙って、彼の話を聞いていた。 「あれはクリスマスパーティーの帰りだった。きみは、酔った男にからまれていた。そこ ...more
第21話:ファインダー越しの愛
「ねぇ、聞かせてちょうだい。どうして離婚しちゃったの?」 意を決し、私はユカに訊ねた。ぶすっとしたまま、ユカは紅茶を飲んだ。私は黙って、ユカの言葉を待った。 ...more
第20話:無駄のない仕事
「この世に無駄なものなんてないんだよ」 と課長は言った。だけどぼくはどうしても納得できなかった。 課長とぼくは画期的な新製品を開発した。長年の地道な研究が、 ...more
第19話:閉じこめられた2人
「私はイヤよ! こんなところで死ねない!」 リツコは叫んだ。叫ばずにはいられなかった。その声は地下道に反響して消えた。先を歩いているカズミは無視した。ずっと無 ...more
第16話:わかってない
「兄貴! ちょっと聞いてくれよ」 といって弟のノブヒコが部屋に入ってきた。 (コイツはまったくわかってない……) 兄とはいえ、他人の部屋に入るときはまずノッ ...more
第15話:危険な行為
「あなた! どうしたの?」 家に帰ってきた主人の背広は破れ、顔には青アザができていた。 「いや、ちょっとね……」 心配させまいと、にっこり笑ってくれる。私は ...more
第10話:永遠の約束
「ユキエ。おれはもう、おまえ以外の女は愛せない。この気持ちは永遠に変わらないよ!」 「うれしい! 私もよ、ハジメ!」 ◎ (とんでもない約束をしてしまった……) ...more
第08話:サトコの決断
「お久しぶりね」 最初、それがサトコだとはわからなかった。着ているものや化粧のせいじゃない。雰囲気がまるでちがう。ハッキリした声、私を見つめる目、背筋の伸びた ...more
第07話:萌えキャラ
今日はトモヨちゃんの誕生日。 なので、誕生パーティを開くことにした。職場の同僚だけでこぢんまりと開くつもりだったけど、次から次へと参加者が集まっちゃったので ...more
第06話:成功の秘密
「昇進、おめでとう!」 「ありがとう、マサアキ♪」 かちんと、ワイングラスが涼やかな音を立てる。ここは高級ホテルのレストラン。今夜は、リエコの昇進祝いだった。 ...more
第05話:ぼくの名前を呼んで
どこかで列車が走る音がする──。 そんな馬鹿な……ありえない。 ぼくは首をふって、幻聴を追い払った。 疫病が大流行して、人類はあっという間に滅んでしまっ ...more
第04話:プリインストール
(こんなはずじゃなかったのに……) ぼくにまたがって、気持ちよさそうに腰をくねらすマリコ。 喘ぎ声がホテルの中に響く。白いのどをそらせて、全身で悦びを享受し ...more
第03話:トキコの部屋
「トキコの部屋は、まだ残ってるんだろうか?」 坂道を登りながら、ケイスケが訊ねてきた。 「さぁね、もう5年も経つからなぁ……」 おれはおざなりに答えた。西日 ...more
第02話:声のある暮らし
となりに、若い夫婦が住んでいる。 旦那は見たことないけど、奥さんはとびっきりの美人だ。引っ越しの挨拶をしたら、なんとなく親しくなれた。家の前で出くわせば、ち ...more