創作 / ショートショート (100) 1,000文字でショートショートを書いてみよう

第100話:夜の渚にて

第100話:夜の渚にて

2011/05/05 - ショートショート

「ねぇ、希望はあったのかしら?」  カナミが不意に訊ねてきた。  どう答えるか迷ったが、質問が過去形と気づいて、ハッキリ答えることにした。 「なかった。今なら断 ...more

第99話:就職戦線、異状なし

第99話:就職戦線、異状なし

2011/05/04 - ショートショート

「課長のやり方はおかしいですよ!」  喫煙所でくつろいでいると、後輩のヤスオが主張しはじめた。なにかと思えば、人事採用の話だった。 「さっき課長の部屋に行ったら ...more

第98話:呼び出された悪魔

第98話:呼び出された悪魔

2011/05/03 - ショートショート

「悪魔よ! 去れッ!」  その瞬間、神父のかざした十字架がストロボのように光った。いや、光ってない。十字架が光るわけがない。だけど私の魂は閃光を感じていた。   ...more

第97話:執行猶予の三悪人

第97話:執行猶予の三悪人

2011/05/01 - ショートショート

「いつか自由の身になれるのかなぁ?」  またプラトンが哲学的なことを言い始めた。飽きもせず悩めるもんだ。プラトンは文句が多いけど、仕事はきっちりこなすからいい。 ...more

第96話:アン・ノウイング

第96話:アン・ノウイング

2011/04/30 - ショートショート

「なぜ信じない? すべて予言されていたんだ!」  ケイジの話を聞いていると、だんだん信じてしまいそうになる。除籍されたとはいえ、ケイジは大学教授だったから、その ...more

第95話:ツンデレは心の中にあり

第95話:ツンデレは心の中にあり

2011/03/04 - ショートショート

「ツンデレはさ、心の中にあるんだよ」  おれはそう呟いて、ビールを飲み干した。お代わりを注文すると、ヒデも追従する。 「なにそれ? その、サキさんって女の子の話 ...more

第93話:改心薬

第93話:改心薬

2011/03/03 - ショートショート

「いいえ、改心薬は完璧です」  タニ博士は静かに断言した。低い声が胸に響く。なんだか気圧されてしまう。これが世界を変えた碩学のカリスマか。  《改心薬》は悪い心 ...more

第94話:世間様が見ている

第94話:世間様が見ている

2011/03/02 - ショートショート

「みなさんが言う"SEKEN様"って、なんなんですか?」  意を決し、私はホストのアサミさんに尋ねてみた。せっかくホームステイしているのだから、この国の文化を学 ...more

第92話:大いなる継承

第92話:大いなる継承

2011/03/01 - ショートショート

「もうすぐ、《継承の儀》がはじまるんだね!」  となりでマナがひとり興奮してる。儀式がはじまるまで、私を落ち着かせてくれる約束だったのに。幼なじみの私がオヤシロ ...more

第91話:明日からの助言

第91話:明日からの助言

2010/07/07 - ショートショート

「明日のデートは止めておけ」  振り返ると、背広を着た男が立っていた。  夜の神社に自分ひとりと思っていたから、びっくりした。そして男の顔を見て、奇妙な感覚に襲 ...more

第90話:罪を憎んで人を憎まず

第90話:罪を憎んで人を憎まず

2010/07/06 - ショートショート

「主文、被告を"人格矯正刑"に処す」  裁判長の言葉に、法廷はどよめく。次の瞬間、ぼくは立ち上がっていた。 「ま、待ってください! それじゃ、被告の望み通りじゃ ...more

第89話:とあるオタクの会話

第89話:とあるオタクの会話

2010/07/05 - ショートショート

「ナマの女って、そんなにいいもんかね...」  コイツは藪から棒になにを言い出すのか。  さいわい午前中のファミレスに客は少なく、ぼくら会話に注意を払うものはい ...more

第88話:遺産相続

第88話:遺産相続

2010/07/04 - ショートショート

「カナちゃん、わしの遺産を継いでくれんか」  驚くか、喜ぶところを期待したが、カナちゃんはこっちを見もせずに断った。 「あのね、私は遺産目当てで介護してるんじゃ ...more

第87話:関係の禁断

第87話:関係の禁断

2010/07/03 - ショートショート

「おれ、卒業したくない。ずっと先生といっしょにいたい」  やるせない横顔を見せるミキヤ。  その瞬間は、額縁に入れて飾っておきたいほど美しかった。この瞬間を見る ...more

第86話:邪教の村

第86話:邪教の村

2010/07/02 - ショートショート

「全部、私が悪いんです」  保護された少女は、そう言って泣き崩れた。  彼女をパトカーまで連れていって、後部座席に座らせる。まだ恐怖による興奮がひどいので、ドア ...more

第85話:私はここにいる

第85話:私はここにいる

2010/07/01 - ショートショート

 宇宙船が燃えている。  起こるはずのない事故が起こってしまった。絶対不変の船体に、赤黒い腐食が広がっていく。基幹部を守るため、まだ乗員が残っているブロックも切 ...more

第84話:顔と名前とココロの不一致

第84話:顔と名前とココロの不一致

2010/06/30 - ショートショート

「たとえ姿形は変わっても、あなたはシュウジさんです!」  病院のベッドで目覚めたぼくを、2人の美女が迎えてくれた。黒髪で和服の似合うスミレさん、茶髪ショートヘア ...more

第83話:トリフィドの涙

第83話:トリフィドの涙

2010/06/29 - ショートショート

「ユミさん、今日は包帯を外しますよ」  医者の声に身が震えた。この2ヶ月、私の視界を覆っていた包帯が、はらり、はらりと解かれていく。ふたたび目蓋を開いたとき、世 ...more

第82話:お酒のチカラ

第82話:お酒のチカラ

2010/04/26 - ショートショート

「嫁の浮気相手は、ぼく自身なんだけどね」  数年ぶりに再会した学友・シンジは、なにやら重い悩みを抱えていた。妻・エリコさんが浮気しているそうだが、話がよく見えな ...more

第81話:魚心あれば水心あり

第81話:魚心あれば水心あり

2010/04/25 - ショートショート

「ケンジくん。悪いね、草むしりなんかさせちゃって」  主任が申し訳なさそうに声をかけてきた。ぼくより年下で、ぼくより低学歴だが、この会社では先輩であり上司だ。 ...more

第80話:忌門箱

第80話:忌門箱

2010/04/24 - ショートショート

(この箱を開けると、世界が閉じると言われている)  机の上にあった小箱を見て、教授の言葉を思い出す。  教授は『忌門箱』と呼んでいた。寄木細工の秘密箱に似てるけ ...more

第79話:新型メタボ対策

第79話:新型メタボ対策

2010/04/23 - ショートショート

「カズオさん、起きてください!」  いきなり布団を剥ぎ取られ、ぼくは床に転げ落ちた。  窓が開いていて、冬の寒気に体温を奪われる。ぼくはベッドに戻ることも、布団 ...more

第78話:ブリガドーンの約束

第78話:ブリガドーンの約束

2010/04/22 - ショートショート

「ま、待ってくれ! まだ地球を破壊しないでくれッ!」  たまらず、おれは祭壇の前に飛び出してしまった。  ゆらゆら詠唱していた人影が、ぴたりと立ち止まる。振り向 ...more

第77話:ママの野望

第77話:ママの野望

2010/04/21 - ショートショート

「あなたは娘の幸せを考えてないの?」  夜、娘の進路について話をしていたら、嫁の「スイッチ」が入ってしまった。いわゆる説教モードだ。こうなると手に負えないが、か ...more

第76話:ストーカー被害

第76話:ストーカー被害

2010/04/20 - ショートショート

「最初は、配達ミスだと思いました」  語りはじめたクミコは、30代半ばのOL。仕事一筋に打ち込んできたので、独身・独り暮らし・彼氏ナシ。「女性の社会進出」の最前 ...more

第75話:恐怖の引き継ぎ

第75話:恐怖の引き継ぎ

2010/04/19 - ショートショート

「ハードな仕事だって、言っておいたよね?」  着任早々、一ヶ月で辞めたいと言い出した若者に、私は強い口調で言った。  若者は「すみません」を繰り返すばかり。これ ...more

第74話:さまよえる生き霊

第74話:さまよえる生き霊

2010/04/18 - ショートショート

「おまえ、まだ生き霊に悩まされているのか?」  げっそり痩せた同僚のタカミチを見て、おれは心配になった。大丈夫と答えるが、ぜんぜん大丈夫じゃない。いまも会議中に ...more

第73話:青雲の志

第73話:青雲の志

2009/12/31 - ショートショート

「先生! 今こそ起ち上がるときではありませんか!」  どえらい剣幕でヤマダ秘書が詰め寄ってきた。  いつも物静かな分だけ、激高するとおっかない。才能ある秘書なの ...more

第72話:彼女をコントロール

第72話:彼女をコントロール

2009/12/30 - ショートショート

「やめて、今夜はそんな気分じゃないの」  そう言ってマリコはそっぽを向いた。毅然とした口調だが、おれは強引にベッドに押し倒す。 「いや! よして!」  強い力で ...more

第71話:変質者の均衡

第71話:変質者の均衡

2009/12/29 - ショートショート

「かわいすぎる娘をもった父親の苦悩が、おまえにわかるか!」  おれはなにも言わず、ただうなずいた。ここで機嫌を損ねるわけにはいかない。  お父さんも話を聞いても ...more

第70話:作品と作家は同一ではない

第70話:作品と作家は同一ではない

2009/12/27 - ショートショート

「ジロウさん、あたし、スタジオを辞めようと思うの」  ユミちゃんが突然ヘンなことを言うので、ぼくはコーヒーを噴いてしまった。  原稿をもっていたので、あわてて2 ...more

第69話:名女優の素顔

第69話:名女優の素顔

2009/12/26 - ショートショート

「ねぇ、まだ私の素顔を見たい?」  意識を取り戻したチヨコさんは、唐突に切り出した。  枕元の夫のゲンゾウ氏も戸惑っていたが、ハッキリした声で答えた。 「あぁ、 ...more

第68話:国産の癒しツール

第68話:国産の癒しツール

2009/12/24 - ショートショート

『きみがこの手紙を読むころ、ぼくはこの世にいないだろう。  ぼくは政府の秘密を知ってしまった。そのことを、きみに伝えておきたい。  いや、きみは知っているはずだ ...more

第67話:回帰日蝕

第67話:回帰日蝕

2009/07/22 - ショートショート

 46年ぶりの皆既日食が明けた。  みるみる周囲が明るくなっていく。まるで天空の穴から、昼間が広がっていくみたい。夜明けとはちがう変化に、私は興奮した。この震え ...more

第66話:殺人罪

第66話:殺人罪

2009/07/09 - ショートショート

「これはどうしたことだ!」  久しぶりに研究室を訪れた私は、驚きを隠せなかった。  アルジャーノンが、研究スタッフと談笑している!  もちろん、アルが言葉をしゃ ...more

第65話:作品づくり

第65話:作品づくり

2009/07/08 - ショートショート

「くだらない仕事はやりたくない!」  タカユキはぷいっと顔をそむけ、ゲームを再開した。その幼稚な態度に、私はむっとした。 「くだらない仕事かどうか、書類を見なさ ...more

第64話:過去を捨てた女

第64話:過去を捨てた女

2009/03/27 - ショートショート

「お母さん、なんで今ごろ?」  カスミの声は震えているが、強い非難が込められていた。無理もない。幼少時に自分を捨てた母親が突然、現れたのだ。恨み言もあるだろう。 ...more

第63話:死んだ主人が日記を書いています

第63話:死んだ主人が日記を書いています

2009/03/26 - ショートショート

 死んだ主人が日記を書いています。  もちろん主人でないことはわかっていますが、そう思えてなりません。  この気持ちを、どう整理すればいいでしょう?  主人の趣 ...more

第62話:蜜の流れる地

第62話:蜜の流れる地

2008/11/17 - ショートショート

「わわっ、なにこれ? すごい!」  なんという甘さ、スーッと溶ける爽やかさ!  爺ちゃんが取り出したハチミツは、たとえるもののない天上の甘露だった。 「どうだ、 ...more

第61話:歴史に残る仕事

第61話:歴史に残る仕事

2008/11/16 - ショートショート

「ぼくはこの仕事に向いてないのかもしれません」  昼休み、弁当を食べ終えたタケルは深いため息をつき、遠くを見据えた。  いつもの陽気さは影もない。よくない兆候だ ...more

第60話:部屋とセーラー服と私

第60話:部屋とセーラー服と私

2008/11/15 - ショートショート

「これって、セーラー服?」  つきあって4年になる彼氏の部屋で、セーラー服を見つけてしまった。  ベッド下の紙袋に入っていた。  きょろきょろ周囲を見渡す。   ...more

第59話:本気のしるし

第59話:本気のしるし

2008/11/14 - ショートショート

「先生、私、初めてじゃないよ」  放課後の教室で、ミユキはぼくの机に腰掛けた。書類が床に落ちる。 「なにが、だだれと、どうして?」  感情が逆流して、うまくしゃ ...more

第58話:吾輩は犬である

第58話:吾輩は犬である

2008/10/06 - ショートショート

 吾輩は犬である。  名前はあるかもしれないが、とんと見当がつかぬ。  ご主人様との関係は、おおむね良好。  そう思うのは、散歩の回数が多いからだ。昨年あたりか ...more

第57話:保証された権利

第57話:保証された権利

2008/10/05 - ショートショート

「いつ、だれと結婚するかは、あたしが決めることでしょ!」  怒鳴られて母さんはしょんぼりした。  言いすぎたかもしれないけど、押し切るしかない。  私は絶対にヨ ...more

第56話:賢い選択

第56話:賢い選択

2008/10/04 - ショートショート

「おまえ、ダイエット中だったのか。そりゃ、悪いなぁ」  高校時代の友人・シゲルは、がははと笑ってジョッキを飲み干した。 (ちくしょう、うまそうに飲み喰いしやがっ ...more

第55話:スタンドアローン

第55話:スタンドアローン

2008/10/02 - ショートショート

「目が覚めたかい?」  ぼくは、ボクに声をかけた。  ボクは身体を起こして、機械の頭を振る。 「ここは宇宙船?」 「ぼくの棺桶になるところさ」  機械のボクは、 ...more

第54話:ブラック・ウィドー

第54話:ブラック・ウィドー

2008/09/25 - ショートショート

「ついにブラック・ウィドーを妻に娶ることができた」  きょう、80歳の誕生日を迎えるカツシゲ翁は、微笑みながらグラスを掲げた。 「いやだわ、そんな言い方されては ...more

第53話:アーバンライフ

第53話:アーバンライフ

2008/09/24 - ショートショート

「あれ? 母さん、どうしたの?」  アパートに帰ると、ドアの前に母さんが立っていた。 「なに言ってんの、ミホ。今日、泊まりに来るって言っておいたでしょ」  ヤバ ...more

第52話:呪われた会社

第52話:呪われた会社

2008/09/23 - ショートショート

「ユミちゃん、この会社はヤバイよ!」  幼なじみのシロウは、青ざめた顔で訴えた。  霊感の強い人だから、なにか言うとは思っていたけど、こんなに真剣だとシャレにな ...more

第51話:モリアーティ

第51話:モリアーティ

2008/09/22 - ショートショート

「今回も解決できましたね、教授!」  ジェーンの賞賛に、教授は不機嫌そうにそっぽ向いた。「ふん」と鼻を鳴らすが下品さはない。すねても英国紳士だった。 「個別の事 ...more

第50話:シャーロック

第50話:シャーロック

2008/09/21 - ショートショート

「ホームズさんが死んだって、本当ですか?」  真っ青な顔で叫ぶレストレード警部に、ワトソンは静かにうなずいた。 「ライヘンバッハの滝で、モリアーティ教授もろとも ...more

第49話:アレルギー×アレルギー

第49話:アレルギー×アレルギー

2008/09/20 - ショートショート

「えぇ! 自宅で海老を食べてるのー?」  トモミの告白に、素っ頓狂な声をあげてしまった。居酒屋の注目が集まる。 「チーちゃん、声が大きい」  私たちは身体をかが ...more

第48話:あらしのよるに流されて

第48話:あらしのよるに流されて

2008/09/19 - ショートショート

「男と女の友情は成立するのかしら?」  サヨコの質問に、ぼくは唾を飲み込んだ。 (どうして、いま、そんなことを訊くんだろう?)  ぼくの答えを待たず、サヨコは言 ...more

第47話:無礼講の罠

第47話:無礼講の罠

2008/09/18 - ショートショート

「今夜は遠慮なく意見を聞きたい。無礼講で話し合おう!」  合宿初日の夜、全従業員を集めたホールで、社長が宣言した。  だが、その言葉を信じる従業員はいない。なに ...more

第46話:悪魔の弁護

第46話:悪魔の弁護

2008/09/17 - ショートショート

「私、悪魔なんです」  少女は抑揚のない声でつぶやいた。  つややかな黒髪と、白いブラウスの対比が印象的だ。しかし接見に訪れた弁護士は、発言を聞き流した。 「き ...more

第45話:モテモテの代償

第45話:モテモテの代償

2008/08/28 - ショートショート

「おれをモテモテにしてくれる? なんで?」  トシオの質問に、黒服の男は汗をぬぐいながら答えた。 「理由は、その、ご説明できませんが、はい、モテモテになります」 ...more

第44話:夫婦の食卓

第44話:夫婦の食卓

2008/06/26 - ショートショート

「ちょっと! あんた、味がわかってんの?」  ある日、晩飯を食べていたヒデは、嫁さんに注意された。突然だったので、なんに怒っているのかわからない。相づちを打ちつ ...more

第43話:弔問客

第43話:弔問客

2008/06/25 - ショートショート

「ご主人からお借りしていた本をお返しします……」  主人の先輩にあたる紳士は、袱紗に包まれた本を取り出した。  きょうは主人の告別式。厳格で、口うるさく、殺して ...more

第42話:ガードレール

第42話:ガードレール

2008/06/24 - ショートショート

「こらっ! 道を外れちゃ駄目じゃないか」  登山コースから外れた子どもを見つけた私は、列に戻るよう注意した。しかし最近の小学生は先生の言うことを素直に聞いてくれ ...more

第41話:最果ての戦場

第41話:最果ての戦場

2008/06/23 - ショートショート

「ちくしょう! 司令部はなにを考えてるんだ?」  レイジ少尉はゴミ箱をけっ飛ばした。おれは肩をすくめ、読書に集中しようとしたが、レイジの怒りは収まりそうにない。 ...more

第40話:愛し方、愛され方

第40話:愛し方、愛され方

2008/04/19 - ショートショート

「やっぱり別れよう」  ケイスケさんは突然、切り出した。結婚して半年。これからと言うときに信じられない。 「やっぱり、ユリ姉さんのことが忘れられないのね」  目 ...more

第39話:予定があると安心する

第39話:予定があると安心する

2008/04/18 - ショートショート

「お客さんは、フランスの哲学者ジャン・ギトンをご存じですか?」  窓の外をぼんやり見ていた私に、運転手が話しかけてきた。本当に話し好きな運ちゃんだな。浮かない声 ...more

第38話:恋する心臓

第38話:恋する心臓

2008/04/17 - ショートショート

「恋をしてるのは、あたしの心臓かもしれません」  なぜここで恋の相談を? と思ったけど、サトコの表情がこわばっていたので、話を聞くことにした。胸をぎゅっと押さえ ...more

第37話:ホトケの舌

第37話:ホトケの舌

2008/01/04 - ショートショート

「どうなさいました? 部長」  ミカに声をかけられ、我に返った。  打ち合わせがてら食事をするため、レストランにやってきた。そこでグラスに入った水を飲んでいたん ...more

第36話:壁の向こう側

第36話:壁の向こう側

2008/01/03 - ショートショート

 その国の端っこに、大きな"壁"があった。  壁の向こう側を見たものはいない。  より正確には、壁の向こう側を見たものは例外なく、こちらに戻ってこないのだ。だか ...more

第35話:動機

第35話:動機

2008/01/02 - ショートショート

「やっぱりキョウコが犯人ですよ!」  調査結果を見て、おれは断言した。  しかし警部は首をかしげている。納得できてないようだ。 「うーん、動機がなぁ……」 「明 ...more

第34話:同伴者

第34話:同伴者

2008/01/01 - ショートショート

「あ、今のところ、右です」  ノリコに指摘されて、ハッとなる。  しかしもう遅い。車はそこそこのスピードで走っている。過ぎてしまった交差点を振り返る余裕はない。 ...more

第33話:裸の女王様

第33話:裸の女王様

2007/08/20 - ショートショート

 『裸の王様』ってさ、どうしてハダカになっちゃったのかな?  いくら王様がバカでも、いきなり透明な服は着ないと思うんだよね。つまり、いくつかの段階を踏んでから、 ...more

第32話:恋の呪い

第32話:恋の呪い

2007/08/03 - ショートショート

「どうしたらわかってもらえるんだ?」  ぼくは怒鳴った。こうなったらハルカにすべてを話すしかない。 「ねぇ、ハルカ。  きみは、ぼくのことを好きだと思っているん ...more

第31話:読書する力

第31話:読書する力

2007/08/02 - ショートショート

「カズユキ、今こそおまえの協力が必要なんだ!」  革命志士であるおれは、カズユキの家で机を叩いた。しかしカズユキは動かず、本を読みつづけている。今日という今日は ...more

第30話:アラン・スミシー

第30話:アラン・スミシー

2007/08/01 - ショートショート

「えぇと、アラン・スミシーをご存じですか?」 私が黙っていると、電話の向こうの担当者はていねいに説明してくれた。 「アラン・スミシーは映画監督の名前です。  い ...more

第29話:ニートの王様

第29話:ニートの王様

2007/07/31 - ショートショート

「おまえ、まだ働いてなかったのかッ!」 強い口調で叱咤したのに、アユミはテレビから目を離さず、「んー」とだけ答えた。布団に横たわって、細い足をぶらぶらさせている ...more

第28話:無言放送

第28話:無言放送

2007/07/30 - ショートショート

「え? いま、なんておっしゃいました?」  ナミコに詰め寄られ、プロデューサーは汗をかきながら答えた。 「き、きみのラジオ番組は今週で終了する。これは局の決定で ...more

第27話:舞踏会の手帖

第27話:舞踏会の手帖

2007/03/01 - ショートショート

「で、爺さんはこんな田舎まで、なにしに来たんだい?」  道を尋ねた青年とつい話し込んでしまったが、これもなにかの縁か。  バスが来るまであと1時間。  少し長く ...more

第26話:浮気の代償

第26話:浮気の代償

2007/02/28 - ショートショート

 夫が浮気している。それは、信じられないことだった。  夫のシンスケは大学の助教授で、私は元・教え子。プロポーズされたときは、正直迷った。年齢差もあったし、シン ...more

第25話:告知問題

第25話:告知問題

2007/02/27 - ショートショート

「ちゃんと余命を告知すべきだよ」  おれの主張は、しかし親族全員に反対された。  親父の危篤を報されたおれは、実家に帰ってきた。救急措置が早かったので親父は一命 ...more

第24話:ウサギとカメと

第24話:ウサギとカメと

2007/02/26 - ショートショート

 あの2人を見てると、人生について考えてしまう。  タカシとヤスオ──。  2人は同じ年の春にやってきて、同じ仕事に着任した。2人とも若く、背格好も似ていたので ...more

第23話:乙な関係

第23話:乙な関係

2007/02/25 - ショートショート

「あのスケベ親父、なんて言ったと思う?」  ナミコ社長は息巻いた。 「ナミコくんは美人だからオトクだね〜、だって!  ふざけんじゃないわよ! あたしの苦労も知ら ...more

第22話:私のヒーロー

第22話:私のヒーロー

2007/02/23 - ショートショート

「あの夜、ぼくはきみに姿を見せてしまった」  私は黙って、彼の話を聞いていた。 「あれはクリスマスパーティーの帰りだった。きみは、酔った男にからまれていた。そこ ...more

第21話:ファインダー越しの愛

第21話:ファインダー越しの愛

2007/02/22 - ショートショート

「ねぇ、聞かせてちょうだい。どうして離婚しちゃったの?」  意を決し、私はユカに訊ねた。ぶすっとしたまま、ユカは紅茶を飲んだ。私は黙って、ユカの言葉を待った。 ...more

第20話:無駄のない仕事

第20話:無駄のない仕事

2007/02/21 - ショートショート

「この世に無駄なものなんてないんだよ」  と課長は言った。だけどぼくはどうしても納得できなかった。  課長とぼくは画期的な新製品を開発した。長年の地道な研究が、 ...more

第19話:閉じこめられた2人

第19話:閉じこめられた2人

2006/05/26 - ショートショート

「私はイヤよ! こんなところで死ねない!」  リツコは叫んだ。叫ばずにはいられなかった。その声は地下道に反響して消えた。先を歩いているカズミは無視した。ずっと無 ...more

第18話:魔性

第18話:魔性

2006/05/25 - ショートショート

「どうしてママは、パパと結婚したの?」 娘のリエが訊ねてきた。いつかは話さなければと思っていたけど、今がそのときかもしれない。洗濯物をたたむ手を止めて、私は娘 ...more

第17話:とりこ

第17話:とりこ

2006/05/20 - ショートショート

「カズオさんって、非常識なんです」  アユミはしずかに話しはじめた。  アユミはふつうのOLだった。そんな彼女がある日、道ばたでナンパされた。真っ赤な高級車から ...more

第16話:わかってない

第16話:わかってない

2006/05/19 - ショートショート

「兄貴! ちょっと聞いてくれよ」  といって弟のノブヒコが部屋に入ってきた。 (コイツはまったくわかってない……)  兄とはいえ、他人の部屋に入るときはまずノッ ...more

第15話:危険な行為

第15話:危険な行為

2005/08/22 - ショートショート

「あなた! どうしたの?」  家に帰ってきた主人の背広は破れ、顔には青アザができていた。 「いや、ちょっとね……」  心配させまいと、にっこり笑ってくれる。私は ...more

第14話:内助の功

第14話:内助の功

2005/08/16 - ショートショート

 雨上がりの駅前で、私はコウイチさんと再会した。  3年ぶりにみる彼は、まるで浮浪者のようにみすぼらしかった。薄汚れたコート、もさもさの髪、落ちくぼんだ目。でも ...more

第13話:最高の死

第13話:最高の死

2005/07/14 - ショートショート

(死んだ。死んでしまった……)  心臓が止まった亡骸から、霊魂が浮かび上がっていく。家族や友人たちが泣いている。私は愛されていた。 (苦痛もなかったし、死後の手 ...more

第12話:滅私奉公

第12話:滅私奉公

2005/07/13 - ショートショート

 ノックの音がして、次の患者が入ってきた。  気の弱そうな男だ。資料には34歳とあるが、50歳くらい見える。目は落ちくぼみ、肌に生気がない。係員にうながされて、 ...more

第11話:隠し味

第11話:隠し味

2005/07/12 - ショートショート

「本当のことを言って、シンイチさん。おねがいだから……」  うるんだ瞳で、カズネは詰め寄ってきた。腕をつかむ指に、ぎゅーっと力がこもる。カズネは疑っている。ぼく ...more

第10話:永遠の約束

第10話:永遠の約束

2005/07/11 - ショートショート

「ユキエ。おれはもう、おまえ以外の女は愛せない。この気持ちは永遠に変わらないよ!」 「うれしい! 私もよ、ハジメ!」 ◎ (とんでもない約束をしてしまった……) ...more

第09話:本来業務

第09話:本来業務

2005/07/10 - ショートショート

「もしもし……あぁ、きみか。  え? 今?  大丈夫、話せるよ。仕事もひと段落ついたところ。  だれも残ってないよ。みんな帰るの早すぎ。  えぇとね、企画書と稟 ...more

第08話:サトコの決断

第08話:サトコの決断

2005/07/09 - ショートショート

「お久しぶりね」  最初、それがサトコだとはわからなかった。着ているものや化粧のせいじゃない。雰囲気がまるでちがう。ハッキリした声、私を見つめる目、背筋の伸びた ...more

第07話:萌えキャラ

第07話:萌えキャラ

2005/07/08 - ショートショート

 今日はトモヨちゃんの誕生日。  なので、誕生パーティを開くことにした。職場の同僚だけでこぢんまりと開くつもりだったけど、次から次へと参加者が集まっちゃったので ...more

第06話:成功の秘密

第06話:成功の秘密

2005/07/07 - ショートショート

「昇進、おめでとう!」 「ありがとう、マサアキ♪」  かちんと、ワイングラスが涼やかな音を立てる。ここは高級ホテルのレストラン。今夜は、リエコの昇進祝いだった。 ...more

第05話:ぼくの名前を呼んで

第05話:ぼくの名前を呼んで

2005/07/06 - ショートショート

 どこかで列車が走る音がする──。  そんな馬鹿な……ありえない。  ぼくは首をふって、幻聴を追い払った。  疫病が大流行して、人類はあっという間に滅んでしまっ ...more

第04話:プリインストール

第04話:プリインストール

2005/07/05 - ショートショート

(こんなはずじゃなかったのに……)  ぼくにまたがって、気持ちよさそうに腰をくねらすマリコ。  喘ぎ声がホテルの中に響く。白いのどをそらせて、全身で悦びを享受し ...more

第03話:トキコの部屋

第03話:トキコの部屋

2005/07/04 - ショートショート

「トキコの部屋は、まだ残ってるんだろうか?」  坂道を登りながら、ケイスケが訊ねてきた。 「さぁね、もう5年も経つからなぁ……」  おれはおざなりに答えた。西日 ...more

第02話:声のある暮らし

第02話:声のある暮らし

2005/07/03 - ショートショート

 となりに、若い夫婦が住んでいる。  旦那は見たことないけど、奥さんはとびっきりの美人だ。引っ越しの挨拶をしたら、なんとなく親しくなれた。家の前で出くわせば、ち ...more

第01話:脳内彼女

第01話:脳内彼女

2005/07/02 - ショートショート

 リプライが遅れてごめん。  もらったメールの内容が重かったので、返答に迷っていた。ちょっと整理させてほしい。  えぇと、彼女とはmixiで知り合ったんだよね。 ...more