創作  2005年07月05日(火)に書いた ショートショート

第04話:プリインストール

第04話:プリインストール

(こんなはずじゃなかったのに……)

 ぼくにまたがって、気持ちよさそうに腰をくねらすマリコ。
 喘ぎ声がホテルの中に響く。白いのどをそらせて、全身で悦びを享受していた。

 ぼくたちは高校1年。マリコに告白したのは2週間前。その日のうちに、ぼくはマリコに食べられた。信じられない。マリコは初めてじゃなかった。あんなにも清楚で、奥ゆかしい《少女》だったのに、実際はとんでもなく淫らな《オンナ》だったのだ。

 たくさんの男たちに開発された肢体が、ぼくの上で跳ね上がる。
 汗が飛び、髪が乱れる。目が合うと、あっという間に唇を重ねて、舌を絡めてくる。
(セックスがこんなにも激しいものだったなんて......)
 マリコは、ぼくの想像を絶するサービスをしてくれた。
 そして、ぼくにもサービスを要求した。
 これほど甘美な命令があるだろうか? ぼくは無我夢中に尽くした。

 あれから2日と空けずにセックスしている。今日はホテルだけど、とんでもない場所でやったこともある。マリコが導く世界は、底が見えなかった。
(ぼくは、ふつうの恋愛がしたかったのに……)
 デートして、手をつないで、キスをして。セックスに興味はあったけど、それはずっと先でよかった。

 煙が出そうなほど激しく身体をこすらせながら、ぼくは思った。
(これじゃ、まるでプリインストールパソコンだ……)
 ひとつずつ自分で設定していくのではない。あらかじめ必要なものが揃っていてる。すっごく便利なんだけど、物足りない。自分の手で作り上げた実感がない。

(だけど……やっぱりマリコが好きだ!)
 納得できないまま頑張ってきたけど、好きなものは好きだ。マリコがそういうタイプなら、ぼくもそうなろう。迷うことなんてないんだ。

 ホテルを出るとき、ぼくはマリコを抱き寄せて、キスをした。
「ぼくはもう迷わない。マリコをもっと愉しませてあげるよ!」
 マリコは一瞬、きょとんとしたけど、つまらなそうに肩をすくめて言った。
「別れましょう、私たち……」
「えぇっ?」ぼくは驚いた。わけがわからない。
 マリコは、親切にも説明してくれた。
「やっぱりさ、初々しさがいいのよね。
 最初のころの新鮮さ、恥じらい、たどたどしい動きが好きなの。
 あなたはもう、なにかを割り切っちゃったみたい。
 私、あなたに幻滅したくないから、ここでお別れしたいの」
そういって、マリコは去っていった。

 ぼくは独り、つぶやいた。
「だれか......ぼくを初期化してくれ!」


(998文字)

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